2023 Fiscal Year Annual Research Report
日米国際結婚夫婦の葛藤解決の心理過程についての研究
Project/Area Number |
19K03267
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
矢吹 理恵 東京都市大学, メディア情報学部, 准教授 (30453947)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際結婚 / 夫婦関係 / 家族療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画である在米の日米国際結婚の離婚調停中/離婚後の日本人妻へのインタビュー調査が、2020年からのコロナ禍により、渡米による調査継続が困難になった。そのため2022年度から、次の課題である、国際離婚に直面する夫婦と子どもへの臨床心理的支援を検討した。2023年度は、次の2点に焦点化した。第一は、出身国が違うことによる多言語・多文化が存在する国際結婚家族が必要とする家族療法の検討である。人間の普遍的な心理的側面を扱う理論から組み立てられた多くの心理療法は、家族メンバー間の国レベルの文化/言語の違いを考慮することはあまりなく、その実践においても、通訳を置くことで家族メンバー間の言語の違いは解消できると考えられていた。精神分析から発展した心理療法だけでなく、言語的対話やコミュニケーションを重視する家族療法・システムズアプローチ、クライアントの文化的背景を重視するナラティヴ・アプローチにおいても同様であった。しかし、筆者のこれまでの日米国際結婚研究からも、国際結婚夫婦間の言語的コミュニケーションの難しさ・第一言語話者と第二言語話者間のパワーの違いは夫婦関係に大きな影響を及ぼすことが明らかになっている。言語のみならず、居住国出身でその国の文化に精通している側とそうでない外国人側との間にもパワーの違いが見られることから、家族療法においてもこれらを考慮することが必要である。2023年度は、第一言語話者と第三言語話者の組み合わせである在仏の日仏国際結婚夫婦にも調査を行い、この点を検討した。第二には、国際結婚破綻時の子どもの国外連れ去りに関するハーグ条約に基づくケースを扱う、国際家事メディエーションに有用な、家族心理学的・臨床心理学的支援の検討を始めたことである。今後もこの点を、国際結婚研究の実務面での社会貢献として、国内外の弁護士・国際法学者と協働して研究と実践を進めていく。
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