2019 Fiscal Year Research-status Report
Characteristics of the execution function in elderly
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19K03272
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
土田 宣明 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (40217328)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エラー / 高齢者 / 抑制 / 抑制機能 / 運動抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,実験室的な課題の中で,連続してエラーを起こしてしまう現象に注目し,この現象がどの程度確認できるのか。さらに,どのような要因がこの現象に影響しており,そこに加齢効果がみられるのかを検討した。若年成人・高齢者,各38名を対象として,運動の負荷が異なる反応スイッチを2種類用意した。ひとつは人差し指の動きだけで作動できる,マイクロスイッチ。もうひとつは,円筒形のグリップを掌全体で握ってスイッチを作動させるグラスプスイッチである。実験課題としては,刺激-反応適合性課題を用いた。実験協力者は刺激が提示されたら,なるべく早く,正確に刺激が提示された側の反応スイッチを押す(あるいは握る)ように指示された(適合条件)。さらに,刺激が提示された側とは逆のスイッチを押す(握る)手続きを同様に実施した(非適合条件)。この実験を,適合,非適合の順で合計64試行実施した。そして,同じ実験を使用するスイッチを変えて,同様に実施した。分析の結果,エラーを繰り返す反応は,全体的に高齢者で多くみられた。しかし,若年成人・高齢者ともに,エラーが連続する割合が一定数以上存在することから,年代に関わらず,エラーが出現すると,続く反応への正確性が低下することがあるものと推察された。一方で,エラーを繰り返す反応は,反応形態に大きく依存することも分かった。高齢者では特に,運動の負荷が少ない場合,若年成人と比較して大きな差は見られなかった。しかし,掌全体を使ってスイッチを握る反応が求められた場合には,加齢効果が大きく,高齢者でエラーを繰り返す率が高くなった。このことより,エラーが連続する現象の背景には,運動性の神経興奮の問題があるものと思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由は次の2点である。予定していた実験の一つの分析が終わり,エラー後の行動の一つである,エラーが連続する現象について分析できたこと。さらに,実行機能の加齢効果に関して,レビュー論文を作成できたことである。以上から,ほぼ予定通りに進んでいるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,同じ実験課題を用いて,2回,3回とエラーが続く現象に注目して,加齢効果を分析する予定である。高齢者のエラーの問題の代表としては,アクセルとブレーキの踏み間違い事故があるが,このタイプの事故では,アクセルとブレーキを踏み間違えた(エラー)後も,エラーが連続して,大惨事につながることが推測される。例えば,2019年4月19日,日本の東京都池袋で,高齢者が起こした交通事故の経過をみると,一度に複数の事故を起こしており,最初の事故を起こした後,それに対応しきれず,結果的に大事故に至っていることが分かる。このような現実の事故場面から考えると,高齢者がエラーを引き起こす原因ばかりでなく,エラーが多連続して起きる現象に注目する必要があるものと思われる。
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Causes of Carryover |
年度末に発生したコロナ禍の影響で,予定していた実験が中断されてしまい,謝金の執行が残ってしまった。本年度は,コロナの状況をみつつ,実験を再開する予定である。
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