2019 Fiscal Year Research-status Report
Study of assessment tools for probation: A case formulation
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19K03277
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
羽間 京子 千葉大学, 教育学部, 教授 (60323383)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保護観察 / 仮釈放 / アセスメント / CFP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の本年度の研究結果は,以下の3点にまとめられる。 1.本研究実施にあたり,我々研究チームは,法務省保護局から,保護観察における新たなアセスメントツール(Case Formulation in Probation/Parole,以下CFP)の試行結果に関する情報の提供を受けた。試行においては,全国の保護観察所でCFPを試行する保護観察官(以下,試行担当官)を指名し,保護観察の事例を,開始時に,CFPを作成する事案(以下,実施群)と作成しない事案(以下,非実施群)に無作為に割付けている。この両群の属性と保護観察の実施計画等に関する情報,さらに,実施群のCFPを収集した。まず,2018年10月から2019年3月までに保護観察を開始した者を対象とする情報について,試行担当官67人,実施群347件,非実施群254件のデータを収集した。これらのデータの分析の結果,実施群のほうが非実施群よりも,犯罪非行誘発要因及び改善更生促進要因をより多く記述しており,保護観察の実施計画における処遇の方針の数も多かったことが明らかとなった。 2.2019年4月から保護観察を開始した者を対象とする情報については,現時点で,実施群262件(試行担当官104人分)と非実施群151件(試行担当官68人分)を収集しており,今後,更なる情報提供が予定されている。我々研究チームは,保護観察官のCFP分析の内容を確認するため,2019年4月以降の実施群について再アセスメントを開始し,229件の再アセスメントを終了した。 3.法務省保護局の許可を受け,犯罪臨床の実務家等の協力を得て,実施群の保護観察事例の事例研究を行った。本年度は,9事例の研究を実施した。具体的には,事例からCFPを作成し,犯罪非行誘発要因と改善更生促進要因,要因の関連性についての検討と討議を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,2018年10月から全国の保護観察所で試行されている,保護観察の新たなアセスメントツールであるCFPが,現行のリスクアセスメントツールに比し,再犯予測力を有するかを明らかにし,さらに,実施上の具体的な留意事項や改良点を論じることである。 まず,我々研究チームは,CFPの開発過程とツールの内容について論文化した。また,2019年度までに,法務省保護局から,2018年10月から2019年3月までに保護観察を開始した者を対象として,347件の実施群のデータと,254件の非実施群のデータを収集した。これらのデータから保護観察の実施計画の内容を分析した結果,実施群のほうが非実施群よりも,犯罪非行誘発要因及び改善更生促進要因をより多く記述しており,処遇の方針に記述されている要因の数も多かったことを明らかとした。すなわち,CFPを作成することによって,保護観察の実施計画の記述内容が充実していることが示された。その成果を国際学会で発表した。 さらに,2019年4月以降に保護観察を開始した者を対象とする試行結果については,現在データ収集を継続中であるが,試行担当官が行ったCFP分析が適切だったかどうかを検証するため,実施群の事例の再アセスメントを実施している。加えて,CFPに関する事例研究を重ね,更に分析を進め,学会発表や論文化の準備を行っている。 以上のことから,本研究課題の進捗状況は,「(2)おおむね順調に進展している」と言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として,次の3点を計画している。なお,新型コロナウィルス感染症対策としての非常事態宣言下にあることから,対面の会議が開催できない間は,情報管理に十分留意しつつ,代替の方法で解析や議論を進めていく。 1.2018年4月から2019年3月までのCFPの試行結果について,その再犯予測力等に関する分析を実施し,現行のアセスメントツールとの比較を行い,学会発表や論文化をしていく。また,2020年度以降に,更に再犯の有無についての追跡調査を行い,学会発表や論文化に向けて研究を進めていく。 2.2019年4月以降のCFPの試行結果のデータ収集を行う。また,試行担当官が実施したCFP分析の再アセスメントを継続する。さらに,試行担当官の分析結果と再アセスメントの結果との比較を行う。加えて,2021年度以降に再犯の有無についての追跡調査を行い,知見を蓄積し,成果を公表していく。 3.犯罪臨床の複数の実務家の参加を得て,CFPに関する事例研究を継続し,犯罪非行誘発要因及び改善更生促進要因として加除修正する事項,事例における要因への該当の有無の評価の方法,要因の関連性を分析する方法,これらの分析を踏まえた保護観察処遇の方針等についての議論を進めるとともに,CFP作成の留意事項や改良点を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症問題のため,予定していた会議が1回キャンセルとなったことから,残金が生じた。研究遂行に必要な消耗品購入のために残金を使用する予定である。
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