2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of assessment tools for probation: A case formulation
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19K03277
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
羽間 京子 千葉大学, 教育学部, 教授 (60323383)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保護観察 / 仮釈放 / アセスメント / CFP |
Outline of Annual Research Achievements |
1.本研究実施にあたり,我々は,法務省保護局から,保護観察における新たなアセスメントツール(Case Formulation in Probation/Parole,以下CFP)の2回にわたる試行結果に関する情報提供を受けた。CFPは,保険統計的再犯リスク,動的犯罪非行誘発要因及び動的保護要因のアセスメントツールを含み,既存のアセスメントツールは再犯の静的リスクのみを測定する。試行において,全国の保護観察所でCFPを試行する保護観察官(以下,試行担当官)を指名し,試行担当官が担当する保護観察事件を既存アセスメントツール実施群とCFP実施群に無作為に割付けた。第一次試行は2018年10月から2019年3月までに保護観察を開始した者が対象であり,我々は655件の情報を得た。法定保護観察期間が2020年5月末を超える485人(既存アセスメントツール実施群205人,CFP実施群280人;仮釈放者と保護観察付一部猶予者を除く)を対象に,同月末までの再犯データをもとに,両アセスメントツールの再犯予測力を検討した。分析の結果,CFPの動的犯罪非行誘発要因得点は再犯の有意な正の予測因子であり,動的保護要因得点は負の有意傾向を示した。既存アセスメントツールの静的リスク得点と再犯との間に有意な関連はみられなかった。以上から,CFPのほうがより適切なアセスメントツールだと考えられた。 2.第二次試行は2019年4月から保護観察を開始した者が対象であり,我々は1039件の情報を得た。保護観察官のCFP分析の内容確認のため,第二次試行の事例について再アセスメントを行い,645件の再アセスメントを終了した。 3.法務省保護局の許可を受け,犯罪臨床の実務家等の協力を得て,CFP実施群の事例研究を行った。本年度は10事例に関して改めてCFPを作成し,犯罪非行誘発要因と保護要因,要因の関連性を検討・議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,2018年10月から全国の保護観察所で試行された,保護観察の新たなアセスメントツールであるCFPが,既存のリスクアセスメントツールに比し,再犯予測力を有するかを明らかにし,さらに,実施上の具体的な留意事項や改良点を論じることである(なお,CFPが2021年1月から正式に施行されたことから,以下,既存のリスクアセスメントツールを,「従前のアセスメントツール」と記す)。 まず,我々研究チームは,2018年10月から2019年3月までに保護観察となった655人のうち,法定保護観察期間が2020年5月末を超える485人(従前のアセスメントツール実施群205人,CFP実施群280人;刑事施設仮釈放者と保護観察付一部猶予者を除く)の再犯データを分析した。その結果,CFPの動的犯罪非行誘発要因得点は再犯の有意な正の予測因子であり,動的保護要因得点は負の有意傾向を示した。CFPのほうが適切なアセスメントツールであると考えられた。この研究成果を論文化し発表した。 さらに,2019年4月以降に保護観察を開始した者を対象とする試行結果については,現在データ収集を継続中であるが,試行担当官が行ったCFP分析が適切だったかどうかを検証するため,実施群の事例の再アセスメントを実施している。加えて,CFPに関する事例研究の結果,CFPによるアセスメントは,とりわけ,保護観察対象者の被害等の体験とその影響をより認識しやすく,それらを踏まえた保護観察処遇の留意事項を見出すことができること,それが再トラウマの防止に資することを明らかにした。この研究成果を,学会発表した。 以上のことから,本研究課題の進捗状況は,「(2)おおむね順調に進展している」と言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として,次の3点を計画している。 1.2018年4月から2019年3月までのCFPの試行結果について,より長期的な再犯の追跡とデータ収集を行い,CFPの再犯予測力等に関する分析を実施し,従前のアセスメントツールによる再犯予測力との比較をし,学会発表や論文化をしていく。 2.2019年4月以降のCFPの第二次試行結果のデータ収集を継続する。また,試行担当官が実施したCFPの分析や従前のアセスメントの事例の再アセスメントを継続する。さらに,試行担当官の分析結果と再アセスメントの結果との比較を行う。加えて,本年度以降に再犯の有無についての追跡調査を行い,知見を蓄積し,成果を公表していく。 3.犯罪臨床の複数の実務家の参加を得て,CFPに関する事例研究を継続し,犯罪非行誘発要因及び及び保護要因として加除修正する事項,事例における要因への該当の有無の評価の方法,要因の関連性を分析する方法,これらの分析を踏まえた保護観察処遇の方針等についての議論を進めるとともに,CFP作成の留意事項や改良点を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
事例研究会を2021年3月にも実施したが,その際の旅費見積と実際の支出に差が生じ,3902円の次年度使用額が生じた。事例研究会等の旅費等として,残金を使用する予定である。
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