2021 Fiscal Year Research-status Report
不安に焦点づけた新しい短期力動的心理療法の導入に向けた予備的研究
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19K03283
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
鈴木 菜実子 駒澤大学, 文学部, 准教授 (70614501)
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Project Period (FY) |
2019-03-01 – 2023-03-31
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Keywords | 精神分析 / 短期療法 / 不安障害 / パニック症/パニック障害 / 効果研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
不安症状に特化した短期力動的心理療法(PFPP)を実施、完了した3ケースについて、内容に関する分析を行った。具体的には、10年以上の臨床経験を持つ精神分析的心理療法家に依頼し、実際に行った治療セッションのうち、初期、中期、後期の3セッションを抜き出し、この内容の評定を行った。評定に用いた尺度は、患者の抱いている対象関係を評価する、関係性プロフィール尺度と、治療者と患者の治療同盟について評価する作業同盟尺度の二つであった。この尺度をもとに、治療内容の質的な評価とその変化についての検討を行った。治療の初期には、白か黒かというに文法的思考が顕著で、特に関係性においてはサドマゾ的傾向が強く、他者表象は攻撃的で迫害的であり、不安や怒りの感情が強かったが、治療が進むつれて他者表象の過酷さが和らぎ、最終的には対人関係における孤独感をより意識するようになり、情緒的な飢餓感を意識するなど、よりかかわりを求める感覚が強まっていったことが分かった。作業同盟については、短期療法であるために目標は共有されており、協働関係は初期から築かれていたものの、治療で期待されているものや、治療プロセスはあまり意味をなしていなかったが、治療が進むにつれて、治療関係への信頼が増し、お互いの理解が強まっていくという傾向がみられた。 また、PFPPの治療者としての理解と介入技法の向上のために、PFPPを考案し、研究と実践を行っているBusch氏のケースコンサルテーションを開催した。この中では、特に、治療初期において症状の発症の経緯とその力動的意味についての再構成を行い、その理解を共有する重要性について改めて確認を行った。 また、これまでのPFPPケースについて治療プロセスをまとめ、広くPFPPについての理解をメンタルヘルスに関わる援助者に求めるために科学評論社の精神科誌にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
不安障害に対する短期力動的心理療法の効果に関する予備的研究として、開始したものの、昨年度、一昨年度ともに新型コロナウィルス感染症の拡大のために、新規ケースの実施を行うことができておらず、現時点では終結までの24セッションを完了できているケース数が3ケースとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施し、24セッションを終了した3ケースについて、日本精神分析学会第68回大会にて、発表を実施する予定でいる。また、質的な検討を行った結果についてもさらに評定者を増やして検討を追加し、公表する予定でいる。 また、昨年度までの状況を鑑みて、今年度はオンライン上での実施を含めてPFPPの新規ケースを実施することを検討している。今年度はできる限り、ケースを増やしてさらなるデータの収集を行うことを目指すこととする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の拡大下において、新規ケースの実施が滞っており、そのために、面接室使用料、録音した治療データの文字起こし、その分析のための費用などの使用がなされなかったために、差額が生じている。今年度は、昨年度までの研究計画と合わせて、オンラインでの治療の可能性も加味して、治療対象者の募集を実施する予定である。
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