2022 Fiscal Year Annual Research Report
Transmission of historical trauma and development of peace education program from the perspective of positive psychology
Project/Area Number |
19K03284
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
上手 由香 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (20445927)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木谷 智子 比治山大学, 現代文化学部, 講師 (70816230)
安部 主晃 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 助教 (80804319)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 戦争 / トラウマ / 被爆二世・三世 / 許し / 寛容性 / ポジティブ心理学 / 平和 / マインドフルネス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,被爆者の次世代への心理的影響に関する調査として,COVID-19パンデミックおよびロシア・ウクライナ戦争による心理的影響について検討した。2017年と2022年に実施した調査結果の比較を行った結果,2回の調査において,抑うつと戦争参戦への認識においては,被爆者の子孫であるかどうかは,影響が見られなかった。一方,健康不安については,被爆2世と3世では異なった影響が生じている可能性が示された。被爆2世については,身体的な不調に囚われやすい心気症的傾向が見られたものの,Covid-19パンデミックのような,健康への脅威と体験されるような社会的危機に対する脆弱性は示されなかった。一方,被爆3世はCovid-19パンデミック時に,被爆者の子孫でない人よりも健康不安が高まった可能性が考えられ,健康への脅威に対する脆弱性を有する可能性が考えられた。 また,ポジティブ心理学的観点から,本研究ではForgiveness(許し・寛容性)に着目し,調査を行った。その結果,被爆2世と3世はそれぞれ,被爆者の子孫でないものに比べ,自身を傷つけた加害者に対して,感情面と行動面で肯定的な許しの反応を有する可能性が示された。本研究の結果から,被爆者の子孫が有するポジティブな資質として,許しの観点から検討する意義が示されたと言える。 心理学的平和教育プログラムの構築については,複数の心理的課題に対するマインドフルネスの効果を実証することができた。しかし,本研究ではCovid-19パンデミックの影響もあり,様々な制約が生じたため,マインドフルネスを用いた平和教育プログラムについては,単発的に実施した段階に過ぎない。今後は本研究の知見を活かし,許しの観点も含めたプログラムの構築や,教育現場など,より幅広い枠組みで実施可能な心理学的平和教育プログラムの構築が目指される。
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Research Products
(5 results)