2023 Fiscal Year Annual Research Report
共同意思決定に向けた、アルツハイマー病発症前診断の効果的な告知マニュアルの開発
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19K03292
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
和氣 大成 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (80815845)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 医学的対処可能性 / アルツハイマー病 / バイオマーカー / 知る権利 / 発症前診断 / アミロイドPET / 医療倫理 / 告知 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβの蓄積を防ぐ薬剤であるレカネマブが、認知機能の低下を抑制した十分なエビデンスを示すことに成功したとして米国食品医薬品局(FDA)に承認され、科学コミュニティに大きな衝撃を与えた。わが国でも厚生労働省による承認を受け、令和5年12月から販売名レケンビとして販売が開始された。国内の報道によれば、医療機関における投与ペースは販売元の製薬会社の予想を上回るとされるものの、海外の報道では、米国内の専門家の半数が使用に消極的な態度をとっているとの調査報告が紹介され、普及が進んでいないとの報道もみられる。本研究が対象とする医学的対処可能性についてはこのように一致した評価が与えられているとは言い難い状態である。そのために論文、学会発表などの資料収集を継続し、神経科学、精神医学、応用倫理学、心理学など複数の関連分野における専門家から、オンラインと対面を含めて広く意見を集めた。また近年、患者を含む個人に医療機関を通さずに企業が直接にサービスや製品を販売するDirect-to-consumer(DTC)が、遺伝学的検査においても活発化しているが、血中アミロイドβとリン酸化タウ蛋白(p-tau)の状態を特定できる検査も開発され、企業などが検査サービスを提供し、消費者が利用可能となる日も遠い未来ではなくなった。これらは医療倫理の四原則における「自律」を促進するものなのか、あるいはかえってリスクになるものなのか、慎重に見定める必要があり、これについても情報を収集した。
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