2019 Fiscal Year Research-status Report
発達障害のある少年院在院者の保護者と教官に対するペアレント・トレーニングの有効性
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19K03303
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
藤原 直子 吉備国際大学, 心理学部, 准教授 (10712276)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 発達障害 / ペアレント・トレーニング / 少年院 / 矯正教育 / 発達上の課題・困難 / 職員研修 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、発達障害児の行動改善に効果が認められている「ペアレント・トレーニング」を、少年院の教官および保護者に実施し効果を明らかにすることが目的である。 初年度は、「情緒障害若しくは発達障害又はこれらの疑いのある少年」を処遇する支援教育課程Ⅱのある3つの少年院と研究協定を交わし、(1)教官に対する質問紙調査、(2)研修会(ペアレント・トレーニング支援者版)、(3)保護者への調査を行った。 (1)行動理論に関する知識(KBPAC)、教育効力感、特別支援教育負担感を依頼し、111名から回答を得た。少年の処遇担当教官には、CBCL(子どもの行動チェックリスト)の「ひきこもり」「不安/抑うつ」「社会性の問題」「注意の問題」「攻撃的行動」の5尺度と、自由記述によって「少年の行動に関して困っていること」「現在行っている対応」「発達障害や対応について知りたいこと」も調査した。 (2)1回90分の研修を2回実施した。研修後のアンケートでは、「研修のわかりやすさ」「参考になった」「次回への参加希望」について高い評価が得られた。自由記述では「役に立ったこと」「詳しく知りたいこと」「今後の研修に対する意見や要望」といった情報を収集できた。また(1)と同じ質問紙を研修後も実施した結果、行動理論に関する知識と教育効力感に向上が認められた。 (3)保護者への調査は、令和元年度中に32名の保護者から回答を得ることができ、インタビューを2名に実施できた。質問紙では、①PNPS(肯定的・否定的養育行動)、②抑うつ度、③自由記述による質問(入院までに困っていたこと、入院した時の気持ち、現在の気持ち、今後についての希望や不安、その他思っていること)を尋ねた。自由記述欄に多くの記載があり、質問紙の結果や記述内容から、保護者の心理状態や今後への不安・希望等を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教官への質問紙調査によって、行動理論に関する知識や、少年の支援に関する心理面の特徴を把握できた。また、少年の処遇担当教官が少年への対応について困っていることや知りたいことを確認でき、次年度以降の研修内容に反映させることが可能となった。 教官への研修を3院で実施し、研修参加による効果や研修に関する要望を把握した。本年度実施した基本的なペアレント・トレーニング支援者版を元に、矯正の現場に即して実施するための応用プログラムを作成・実施していくための情報を得ることができた。 研修内容を少年への対応に活用し、その効果を確認することは困難であったが、次年度以降どのような形で効果測定を行うか検討することができ、研修後のアンケートから、教官が知りたい内容を知ることもできた。 保護者への調査では、当初の予定を変更して質問紙による調査が中心に行い、保護者の心情や必要な支援を明らかにすることができた。まだ調査継続中であり、貴重なデータを蓄積している。次年度のペアレント・トレーニングの内容検討および実施の基盤を構築できた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、令和2年度は、引き続き教官への研修を実施するとともに、保護者に対するペアレント・トレーニングの内容を精選し実施する予定である。 教官に対する研修(ペアレント・トレーニング支援者版)では、初年度に収集した要望に多かった「障害に関すること」「具体的な対応」を取り入れ、講義形式に加え、少年の処遇担当者を対象とした事例検討を行う。特定の少年数名について、事例検討および助言を行い、可能な範囲で少年の行動変化を確認したり、定期的に行動チェックを行うなどして効果測定とする。 保護者に対しては、引き続き質問紙調査を実施し、データを蓄積した後、詳細な分析を行う。支援教育課程Ⅱの少年院に限らず、協力少年院を増やすことも検討する。その後、保護者に必要な内容を参考にペアレント・トレーニングプログラムを作成するが、少年院に来院する機会や時間を考慮し、1回30分程度、1名ずつで実施できる内容にする。各院と協議し、希望者を募って実施し、保護者のストレス、抑うつ、子どもに対する考え方等について、プログラム前後の変化を測定して効果検証を行う。 また、令和元年度の調査内容および研究成果について、関連する学会や学術誌において発表し、学術誌への投稿も行う。 新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、各少年院へ出張して協議や実践研究を行うことは困難な状況である。教官および保護者へ実践は本年度後半に計画し、前半は電話による研究協議や実施内容の検討を行う予定である。
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Research Products
(8 results)