2021 Fiscal Year Research-status Report
発達障害のある少年院在院者の保護者と教官に対するペアレント・トレーニングの有効性
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19K03303
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
藤原 直子 吉備国際大学, 心理学部, 准教授 (10712276)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 発達障害 / ペアレント・トレーニング / 少年院 / 矯正教育 / 発達上の課題・困難 / 職員研修 / 保護者支援 / 応用行動分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、発達障害児の行動改善に効果が認められている「ペアレント・トレーニング」を、少年院の教官および保護者に実施し、それぞれの効果を明らかにする実践研究である。 2021年度は、2020年度の計画を継続し「情緒障害若しくは発達障害又はこれらの疑いのある少年」を処遇する支援教育課程Ⅱのある3つの少年院において、(1)教官への研修(ペアレント・トレーニング支援者版)を実施する、(2)少年の処遇担当者を対象とした事例検討を行い、特定の少年について効果を検討する、(3)保護者に対する個別あるいは小集団のペアレント・トレーニングを実施する、という3つの実践研究を実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、研究者が県外の少年院に出向くことができなくなり、以下の実施状況となった。 (1)研究者が訪問可能であった近隣の少年院において、2020年度に作成した「支援者用ワークブック」を使用した研修会を1回実施した。 (2)研修後に、少年の処遇担当者との情報交換及び少年の行動観察を行った。その後、特定の少年1名について継続的に事例検討会を実施した。 (3)3つの少年院職員(主に法務教官)を対象に、保護者支援に関する質問紙調査を実施し、128名から回答を得た。「親子関係の不足や愛着の問題」「大人や他人への敵意や強い反抗心」「トラウマや心理的問題」「発達障害等の発達上の課題」といった少年の問題に直面した際に保護者支援の必要性を感じるということが見出された。具体的な保護者支援の方法についても、多くの意見を収集した。 (4)近隣の少年院において、ペアレント・トレーニングの内容を取り入れた保護者講習会を2回開催し、延べ10家族19名の保護者が参加した。さらに、要望のあった保護者3家族には個別面接を行い、保護者の不安や子どもへの対応に関する悩みを共有した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
年度当初からの新型コロナウイルス感染症の拡大により、研究者が県外の少年院に出向くことができなくなり、法務教官への研修や保護者へのペアレント・トレーニングの実施が困難であった。近隣の少年院1か所のみで実施したが、当初予定していた内容を縮小せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時は3年間の研究計画であったが、2020年度から遅れているため、1年間の延長を申請した。2022年度に、2020年度から予定していた内容を「支援教育課程Ⅱ」のある少年院に限らず複数の少年院において実施し、研究成果を検討する。 具体的には、教官に対する研修(ペアレント・トレーニング支援者版)、少年の処遇担当教官との事例検討を行う。特定の少年について定期的に事例検討を行い、担当教官による行動観察記録や情報聴収から少年の行動変化を確認し、本研究の効果検証を行う。 保護者に対しては、保護者講習会としてペアレント・トレーニングの内容を教授し、参加後のアンケートによって意見や感想を収集する。その後、希望者を募ることが可能な状況であれば個別でペアレント・トレーニングを実施し、保護者の心理面や子どもに対する考え方等を尋ねて効果検証を行う。 また、これまでの研究成果について、関連する学会や学術誌において発表する。研究期間の最終年度となるため、研究成果と今後の課題を整理していく。
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Causes of Carryover |
2020年度に続き、年度当初から、新型コロナウイルス感染症の拡大および感染予防のため、予定していた少年院での研究実施や学会参加が困難となった。法務省及び3つの少年院に定期的に出向くための旅費、関連学会に参加するための旅費、学会でシンポジウムを開催するための経費等を使用しなかったため研究費の未使用額が多くなった。 したがって、研究期間を1年延長する。2022年度は、実施計画を修正し、2020年度以降に実施予定であった内容を遂行する。遠方の少年院への出向も可能となると想定されるため、繰り越した費用は旅費として使用する。さらに、すでに研究協定を交わしている3院以外の少年院にも実施を拡大するため、その旅費や研究実施費用を計上する。
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Research Products
(4 results)