2022 Fiscal Year Research-status Report
アクセプタンス対処が強迫症状を低減させるプロセスの解明と介入効果の検討
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19K03311
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
清水 健司 広島国際大学, 健康科学部, 准教授 (60508282)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 強迫傾向 / アクセプタンス / 体験の回避 / 認知的統制 / 対人ストレッサー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績としては,ストレス状況下におけるネガティブ思考の低減に資するスキルである認知的統制と,対人関係の摩擦から生じる負担である対人ストレッサーが,どのように強迫傾向に影響するのかを検討することであった。認知的統制とは,主に抑うつの低減に効果を持つスキルとされ,状況を客観的に分析して積極的に解決に取り組むスキルとされる論理的分析と,混乱的な思考の暴走から一定の距離を置くことができるスキルとされる破局的思考の緩和の2側面が想定されている。同じく抑うつ低減に効果を発揮するスキルではあるが,具体的な対処方略としての性質は同一ではないと考えられる。いずれのスキルが強迫傾向の低減に有効なのかを実証的に分析する。 そのため,強迫行為傾向(Time2)を従属変数とし,まず年齢・性別・強迫観念傾向(Time1)を投入(Step1),そして認知的統制(論理的分析or 破局的思考の緩和)と対人ストレッサー(Time2)の主効果項を投入(Step2),最後に交互作用項を投入(Step3)した階層的重回帰分析を行った。その結果,強迫行為傾向において,1ヶ月前の強迫観念傾向の高さは,その後の増幅に大きく影響することが示され,その上で抑うつ低減スキルである論理的分析が,たとえ対人ストレッサーが低い場合にあっても強迫行為の増幅に影響することが示唆される結果となった。これは抑うつ低減に資するはずの論理的分析が,強迫傾向では状況を客観的に分析しようとする意図が確認行動を増加させることを示す。ストレス状況下では,自分の置かれた環境を冷静に整理することで,新たな建設的思考を生むことが可能になる。しかし,強迫傾向では,その整理作業が自分の至らなさを改めて再発見させる可能性につながることが示唆され,この点については今後更なる検討が必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響もあり,実験的検討は見送らざるを得ず,研究の進捗においても影響を受けていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
実験的検討が困難になることを見越して,今後はWEBによる調査研究を充実させることを念頭におき,当該課題を前に進めてゆくことが可能と考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)当初予定よりも安価に研究が進捗したため,次年度使用額が生じている。 (使用計画)WEBによる調査研究の充実を予定しており,研究課題を前に進めるために有効な活用を計画している。
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