2020 Fiscal Year Research-status Report
がん患者遺族の悲嘆に対するミーニング・センタード・サイコセラピーの有効性の検証
Project/Area Number |
19K03312
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
幸田 るみ子 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30384499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠井 仁 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (80194702)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | がん患者遺族 / ミーニング・センタード・サイコセラピー / 悲嘆 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米国を中心に進行がん患者の心理状態の改善に有効性が検証されているミーニング・センタード・サイコセラピー(以下MCP)について、がんで家族を亡くした遺族の死別後悲嘆に対する有効性を検証することを目的としている。死別の悲嘆とは、その国独自の文化、死生観、価値観などが大きく影響するため、米国で有効なMCPが果たして日本人にも有効であるのか、検証する必要がある。従って本研究は、MCPの内容を質的に分析し、日本人にとってMCPの教示やプロセスがどの様に受け止められ、どの様な反応形成に至るか検討を行う。 方法として、1)対象:がんで家族を亡くした18歳以上の遺族で、死別後半年以上経過した時点でも、悲嘆が強く持続している者を対象とした。2)手続き:緩和ケア病棟、がん患者家族会・遺族会、在宅緩和ケア診療所等において機縁法で参加者を募集した。MCPのプログラムは、Brietbart W.ら(2010)が考案した内容をもとに、日本人に合わせた短縮版を研究代表者らが作成した。具体的には、第1回:人生の意味の概念、第2回:自分の役割の再発見、第3回:人生で得た教訓、第4回:がん闘病の意味、第5回:未来への目標・希望の全5回の短縮版とした。また、原版では様々なホームワークが設定されているが、本研究の対象者は高齢者であることを考慮し、ホームワークは1つのみとした。MCP実施に当たっては、精神科医にスーパーバイズを受けながら実施した。3)評価と分析:MCP実施前後に、①複雑性悲嘆質問票日本語版(ICG-13)②抑うつ尺度((CES-D)③精神健康調査票(GHQ-12)④心的外傷後成長尺度(PTG短縮版)を実施した。また、MCPの内容は、修正版グランデット・セラピー・アプローチ(M-GTA)で分析した上で、MCPの効果について質的に分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年3月末現在5名の遺族のMCPが終了した。対象者は、男性2名女性3名、計5名であり、平均年齢は67.4歳、平均がん闘病期間は26.4カ月、家族の死別後平均期間は10.8カ月だった。BSCとなってから自宅療養期間が有る者4名、無い者が1名だった。 MCP実施前後で、ICG-13、CES-D、PTGのそれぞれの平均得点はいずれも有意な改善を認めた。GHQ-12の平均得点は有意な変化が認められなかった。また、5名のMCPの録音データを基に質的な分析を行い、仮の概念関連図を作成しプロセスの分析を行った。 しかし、対象者が高齢者であることも関連して、新型コロナウイルス感染の影響で、研究参加者の登録取り消しや実施延期があり、MCPの実施がやや滞っている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、MCP群の対象者を増やし、質的分析の概念関連図をブラッシュアップしていく。 また令和3年度、東京パリアティブ研究会及び日本サイコオンコロジー学会で質的研究について研究発表を行う予定である。更に、現在研究内容を論文にまとめており、論文を完成させpalliative-and-supportive-careに投稿予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、関連学会や国際会議が中止またはリモート開催になったため、参加費や旅費等が支出されなかった。また、やや進捗が遅れているため、研究成果の論文化が進んでおらず、英文校正等の費用が支出されなかったため、使用額が少なかった。 次年度使用計画としては、MCPの対象者を増やす予定であり、専門家からのスーパーヴィジョンを受ける費用、およびリモート開催の学会で発表予定の学会参加費として使用予定である。また研究成果の論文を作成中であり、英文校正費等で使用予定である。
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