2020 Fiscal Year Research-status Report
A clinical psychological study on professional identity development of graduate students
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19K03317
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
黄 正国 広島大学, 保健管理センター, 講師 (80735275)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 専門家アイデンティティ / 大学院生 / 学生相談 / 心理適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目の本年度では,昨年度の面接調査の結果を踏まえて,大学院生の専門家アイデンティティ形成の状態を測定する尺度と,専門家アイデンティティ形成の関連要因(阻害要因と促進要因)を測定する尺度の項目を選出した。同意が得られた大学院生223名を調査対象に,郵送法で無記名自記式質問紙調査を実施して,尺度の信頼性と妥当性を検討した。 専門家アイデンティティ尺度は,「内的動機」,「主体的行動」,「知的な喜び体験」,「専門家コミュニティ感覚」の4因子が得られた。心理的適応を促進する共通要因は,「指導教員による肯定と励まし」,「安心して相談できる人の存在」,「研究の価値と意義への確信」,「研究成果が認められた体験」,「家族の理解と支援」の5因子が得られた。心理的適応を阻害する共通要因は,「情報と資源が不足」,「人間関係のトラブル」,「研究テーマへの迷い」,「進路への不安」,「過重な役割による負担」,「経済的な困難」,「研究成果に関する焦り」,「心身の疲労」の8因子が得られた。 また,調査の結果から,大学院生は比較的に狭い人間関係のネットワークの中で忙しい研究活動を行っているため,十分なソーシャルキャピタルが得られない状況にいることが明らかになった。ストレスに対処する資源が少なく,メンタルヘルスのリスクが高いだけではなく,生涯キャリア発達も影響されている。一方で,研究コミュニティへの帰属感が安心して研究に取り組める前提であり、さらに円滑なコミュニケーションと良好な人間関係は特に環境要因として重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに,大学院生の専門家アイデンティティ尺度,適応促進要因尺度,適応阻害要因尺度を作成した。 また,本研究の結果に基づいて,次年度予定する介入研究するための準備が整っている。 以上のように,研究は予定通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の3年目は,以下の研究を推進する予定である。 1,大学院新入生を対象に支援プログラム(心理教育,情報提供,相談支援)を行い,研究環境への早期適応をサポートする。それとともに,専門家アイデンティティ形成を促していく。 2,学生相談機関やピアサポートルームなどの学内の支援資源を動員し,大学院生の専門家アイデンティティ形成の各段階(入門期,成熟期,独立期)における可能な支援方法を試みて,大学院生の専門家アイデンティティ形成とその関連要因をアセスメントできる尺度を用いて,支援を行った前後の変化を評価して,支援方法の効果を検証する。 3,上記の成果を関連学会などで発表する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年2月下旬から新型コロナウイルスの感染拡大により、本年度に予定した学会発表がキャンセルになった。そのため、出張旅費の予算執行が行えなかった。また、データ入力業務を依頼する予定の補助者も新型コロナウイルス感染拡大のため勤務できなかった。人件費の予算執行が行えなかった。 (使用計画) 次年度の介入研究と学会発表を行う際に、データ入力の人件費と出張旅費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)