2019 Fiscal Year Research-status Report
過剰適応者のための自己への思いやりの視点を重視したロールレタリングの開発
Project/Area Number |
19K03325
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
金築 智美 東京電機大学, 工学部, 教授 (40468971)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 過剰適応 / セルフ・コンパッション / 相反する自己 / 内的適応 / ロールレタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度では、過剰適応の高低と自己への思いやりの視点の有無が,内的適応(本来感,自己受容感)に与える影響を調べることを目的とし、2つの研究を実施した。なお、本研究を行うに際して、予め東京電機大学のヒト生命倫理審査委員会にて承認を得て実施した。 <研究1> 過剰適応者における自己への思いやりの視点の有無が、本来感と自己受容感に及ぼす影響を調べることを目的に、大学生500名を対象にweb調査(株式会社ジャストシステム)を実施した。測定尺度は、①青年期版過剰適応尺度(浅井,2014),自己受容性尺度(宮沢,1980),本来感尺度(伊藤,2005),自己への思いやりを測るセルフ・コンパッション尺度の12項目短縮版(有光,2014)を用いた。過剰適応の高低とセルフ・コンパッションの高低の4つの組み合わせにおける本来感と自己受容感について、1要因の分散分析を行った。その結果、過剰適応高者でセルフ・コンパッションが低い者の本来感及び自己受容感が有意に低かった。 <研究2> 過剰適応者の自己志向性と他者志向性の間にある相反する自己間の葛藤解消を目指した介入法構築の手がかりを得るため、2つの自己間の本来感(伊藤,2005)の違いを調べることを目的とした。大学生68名を対象として、相反する自己(他者の期待に応えたくない自己(私①)と他者の期待に応える自己(私②))にポジショニング(溝上,2013)した際の本来感の違いを調べる実験を行った。収集されたデータについて、1要因分散分析を行った結果、ポジショニング操作で、同じ自己でも自分らしくある感覚である本来感の程度に違いがあることが示唆された。 以上により、過剰適応が高く自己への思いやりが少ない者の本来感及び自己受容感が低いことを鑑み、彼らの相反する自己のポジショニングによる本来感と自己受容感の違いを検証することが求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに、過剰適応の高低と自己への思いやり(セルフ・コンパッション)の視点の有無が,内的適応(本来感,自己受容感)に与える影響を調べるために、調査研究及び実験研究を実施することができた。また、その効果として、過剰適応者の中でも自己への思いやりが少ない者の内的適応(本来感や自己受容感)の低さが浮き彫りになったことから、彼らへの援助の必要性が明らかとなった。さらに、自己志向性と他者志向性の間にある相反する自己間における本来感の違いを明らかにできたことで、過剰適応者の援助方法の開発のための足掛かりを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、令和元年度で実証された成果を、役割交換書簡法・ロールレタリング学会及び日本心理学会にて発表することを予定している。また、令和元年度に行った研究2をさらに推し進め、過剰適応者の高低と自己への思いやりの高低の4つのタイプにおいて、相反する自己のポジショニングの違いによる本来感の違いについてのデータ解析を行うことを予定している。さらに、過剰適応が高く、自己への思いやりが不足している者を対象としたロールレタリングの短期的介入を実施する準備を進める。
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Causes of Carryover |
調査・実験のデータ解析用のソフト及びPCを購入予定である。新型コロナウイルスの影響により海外渡航が難しい状況にあるため、情勢を踏まえ、問題がないようであれば国際学会への参加費・旅費に充てたいと考えている。さらに、心理的介入実験を行う予定であるが、実験参加者への謝礼に使用することを計画している。
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