2021 Fiscal Year Research-status Report
過剰適応者のための自己への思いやりの視点を重視したロールレタリングの開発
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19K03325
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
金築 智美 東京電機大学, 工学部, 教授 (40468971)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 過剰適応 / セルフ・コンパッション / ロールレタリング / 本来感 / 自己受容感 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度では、過剰適応者で自己への思いやりが低い場合には、心理的葛藤が強く、内的適応(本来感、自己受容感)が損なわれることが示唆された研究結果(令和元年・令和2年度実績)を踏まえて、 過剰適応が高く、自己への思いやりが低い者をターゲットとしたロールレタリング(以下、RL)の介入実験を、令和2年度における研究3と同様の手続きにて実施した。当初予定していた対面での実験はCOVID-19の感染拡大による影響によって困難と判断したため、オンライン(Googleフォーム)上にて、実験を行った。 具体的には、実験参加への承諾が得られた者のうち、過剰適応の程度が平均値より高く、自己への思いやりであるセルフ・コンパッションの程度が平均値よりも低い者40名を対象に、RL群(27名)と統制群(13名)に分けて、実験を行った。実験前後には、2つのタイプの肯定的感情(①アクティブ感情、②受動的感情)と否定的感情、本来感、および自己受容感の程度を測定した。収集されたデータについて、2要因(介入、段階)の分散分析を行った。その結果、RL群の自己受容感が統制群のそれと比較すると、有意に上昇した。また、アクティブ及び受動的な肯定的感情ともに、介入後においてRL群の方が統制群と比して、その程度が高かった。否定的感情については、RL群のみ介入前後で低減した。以上により、自己への思いやりを育むことをねらいとした「理想的な聴き手」を創り、それをイメージする手続きを取り入れたRLを行うことを通して、肯定的感情が高まり、否定的感情が減じ、さらには自己受容感が高まることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は、COVID-19感染拡大による影響のため、過剰対象者を対象とした対面による介入研究を行うことが困難であったため、オンライン上での実施計画に変更した。また、令和2年度における実験開始時期に遅れが生じたことによる影響が尾を引いている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、令和2年度に作成した過剰適応者に対するロールレタリングの介入プログラムの内容を精緻化し、新たな介入プログラムによる実験を行う予定である。実施方法は、COVID-19の感染状況を考慮し、令和3年度と同様に、オンライン上で行いたい。さらに、令和3年度の研究成果を、日本心理学会および役割交換書簡法・ロールレタリング学会にて発表予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19による影響により、令和3年度と同様に、海外渡航が難しい状況にあるため、実質的な旅費が未使用な状況である。諸国の国際学会は、既に対面での開催が実施されつつあるが、現地に赴くのは未だ困難であると考えているため、オンラインで開催される国際学会がある場合には、それへの参加を検討し、本研究課題の既に遂行した研究発表や関連のある知見を得ることを予定している。また、本務校での授業実施形態が対面授業に戻ったため、大学生を対象とした実験参加を通常通りに行えることを見越して、介入実験を行うことを予定している。人件費の予算を、実験参加者への謝礼に充てる計画である。
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