2019 Fiscal Year Research-status Report
画家、彫刻家、音楽家、舞踊家の「自我のための退行」の有り様の違いについて
Project/Area Number |
19K03338
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊藤 俊樹 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (40288759)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自我のための退行 / 抽象彫刻家 / ロールシャッハ法 / 創造的退行 / 自閉的明細化 / 芸術家 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、本課題の研究遂行に当たり、現代芸術の最先端を知り、その創作の心理を探るため、現代美術の情報が集中的に集まっている東京に出張し、最先端の現代美術の情報を集める、その背後にある創作の心理を考察した。 その上で、まずはテーマの1つである彫刻家のロールシャッハ・データと創作のインタビューをすることにした。当初は、対象となる彫刻家の作品の種類については問わなかったが、大きく分けて具象彫刻家、抽象彫刻家の2つに別れることが分かり、データの等質性を保つために、どちらかの彫刻家に絞ることにした。 先行研究から、具象画家よりも抽象画家の方が退行しやすいということが分かっていたので、芸術家の退行を調べるためには、抽象彫刻家の方が適していると考え、抽象彫刻家を対象とすることにした。 抽象彫刻家のデータは本来ならば、予定していた10名を年度内に集める予定だったが、コロナウィルスのため残念ながら全員分のデータを集めることができなかった。現時点では、6名のデータが集まっている状態である。 6名のデータを集計し記号化した段階で言えることは、抽象彫刻家も他の芸術家のように「自我のための退行」を行いやすいということである。他の芸術家との違いは、AuEl(自閉的な明細化)にあると言える。他の芸術家も特異な自閉的な明細化を行っていたが、抽象彫刻家は、「力」「動き」「重力」に関わる自閉的な明細化が特徴的にみられた。抽象彫刻家にとっては、鉄という素材(6名の抽象彫刻家は全員、鉄を扱う抽象彫刻家だった)を扱うということは、「重力」に逆らって作品を立ち上げることであり、そこには「重力」に逆らう「力」が必要であり、また目に見えない「力」の「動き」が重要でもあった。そのような抽象彫刻家独自の作品成立に関するプロセスから、抽象彫刻家独自の自閉的な明細化が生じたことが推測された。更なるデータを追加しこの結果を確認したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は抽象彫刻家のデータを10名集め、集計、分析、比較検討する予定だったが、コロナウィルスのため、東京で活躍している抽象彫刻家に会うことができず、データを集めることができなかった。コロナウィルスの影響によっては、しばらく東京出張に行くことができないため、本年度も計画が遅れる見込みがあるが、その場合は、来年度に集中的にデータを集めたいと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
上にも述べたように、本研究では、東京で活躍している現役のコンテンポラリー・アートの芸術家を対象にしているため、コロナウィルスの影響によっては、データの収集に遅れが生じる可能性がある。現時点では、抽象彫刻家をあと4名、コンテンポラリー・ダンサーを10名、コンテンポラリー・コンポーザー10名を予定しており、本来の計画では本年度にコンテンポラリー・ダンサー10名、来年度でコンテンポラリー・コンポーザー10名のデータを収集する予定だったが、遅れる可能性がある。場合によっては、コンテンポラリー・コンポーザー10名のデータ収集はあきらめ、画家、彫刻家、ダンサーとの間での比較、検討、分析、考察になる可能性がある。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスのため、予定していたデータ収集のための東京出張ができず、旅費があまったため。コロナウィルスの状況がよくなれば、データ収集を再開し、東京出張を精力的に行う。
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