2020 Fiscal Year Research-status Report
画家、彫刻家、音楽家、舞踊家の「自我のための退行」の有り様の違いについて
Project/Area Number |
19K03338
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊藤 俊樹 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (40288759)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自我のための退行 / 抽象彫刻家 / ロールシャッハ法 / 創造性 / 芸術家 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、彫刻家と舞踏家の「自我のための退行」の有り様を調べるために、抽象彫刻家6名、舞踏家10名のデータを集める予定だったが、コロナのため出張ができず、彫刻家3名のデータを集めるにとどまった。 現時点では、昨年度集めた抽象彫刻家4名のデータに加え7名のロールシャッハテストのデータ及び、創作に関するインタビューの逐語禄を作成し、ロールシャッハテストに関しては、記号化及び、各人のデータの解釈まではできたところである。 現時点での結果の分析では、抽象彫刻家も一次過程的思考プロセスへの退行は見られるが、抽象画家と同じように、形態水準が高く、他のコントロール要因も伴い、「自我のための退行」が生じていることが分かった。 抽象画家との比較では、抽象彫刻家の方が、無生物運動に関する自閉的明細化が特徴的であった。これは、抽象彫刻家が、創作の際に「重力」という抽象的な力を必ず意識をしないといけなければならず、彼らが常に「重力」という力、及び、作品制作において「重力」以外の力というものを意識して、創作しているため、ロールシャッハテストにおいても、「重力」に代表されるような無生物運動にまつわる反応が多く算出されたためだと考えられる。抽象画家と抽象彫刻家は同じように「自我のための退行」をするが、細部を見ると、その退行の様相に微妙な差異が見られることが分かった。 現在は、無生物運動に関する自閉的明細化だけではなく、他の一次過程的反応カテゴリーに差異が見られないかを検討しているとことろである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上にも述べたように、コロナウイルス感染拡大により、対象となっている首都圏に在住する国内外で活躍している抽象彫刻家及び舞踏家のデータを集めるために、出張することができず、当初の予定より、13名分のデータが不足している。 そのため、当初予定していた、抽象画家、抽象彫刻家、舞踏家の「自我のための退行」の違いを分析検討することができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本来は、2021年度の前半までには全てのデータを集め、2021年度の後半から、2022年度にかけて、結果の分析、考察を行う予定だったが、研究の進捗が遅れているため、2021年度に、不足している13名分の抽象彫刻家、舞踏家のデータと本来2021年度に集めるはずであった音楽家のデータ5名分を集めることにする。そして、2022年度に残りの音楽家5名のデータを集めると同時に、データの分析、結果の考察を行うことにする。コロナウイルス感染拡大に対しては、大学に感染防止対策をきちんとした上で、研究を行う旨を伝え、首都圏への出張を認めてもらうよう働きかける。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大のため、研究対象となる国内外で活躍する首都圏在住のアーティストに調査を実施するための出張をすることができず、出張旅費を使用することができなかったため次年度使用額が生じた。 2021年度は、翌年度分と合わせて、データ収集のための出張を精力的に行い、予算を使用する予定である。
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