2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K03340
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
林 光緒 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00238130)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 入眠困難 / 認知的覚醒 / 入眠期 / 脳波段階 / 睡眠ポリグラフ記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
入眠困難は,生理的覚醒と不安や反芻などの認知的覚醒が関与すると考えられている。しかし従来の研究では,認知的覚醒が入眠期のどの部分に悪影響を与えているのかは明らになっていなかった。そこで本研究では,我々の研究グループが開発した入眠期の脳波段階を用いて,「眠ろうと努力すること」が入眠過程に及ぼす影響を検討した。 【方法】 睡眠愁訴をもたない健常な男子大学生9名(21~23歳)が実験に参加した。参加者は事前に実験内容について説明を受けた後,同意書に署名した。無理に眠ろうとせず,眠くなったタイミングで眠るよう教示した統制条件と,できるだけ早く眠るよう教示した入眠努力条件の両条件を実施した。実験は3夜連続ないし2夜連続を2回実施し,いずれも1夜目を順応夜とし,2夜目ないし3夜目を実験夜(統制または入眠努力)とし,標準的睡眠ポリグラフ記録をおこなった。なお本研究は学内倫理委員会の承認を得て実施された。 【結果と考察】 入眠努力条件の方が統制条件より睡眠段階1潜時が長く,睡眠段階1が長かった。入眠期の脳波段階については,脳波段階1(α波連続期)と4(平坦期)において,入眠努力条件の方が統制条件より出現時間が長かった。脳波段階1は消灯直後で最も覚醒レベルが高く,脳波段階4は出現時間が短く不安定な時期である。しかし,比較的安定している脳波段階5(θ波期)や,睡眠系の活動が顕著になる脳波段階6(頭頂部鋭波期)以降では条件差はみられなかった。以上のことから,入眠努力は入眠期全体に影響を及ぼすのではなく,覚醒系の活動が低下する入眠期初期に影響を及ぼすし,睡眠系の活動が発現する入眠期後期には影響を及ぼしにくい可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた、「入眠努力が入眠過程に及ぼす影響」に関する研究は、実験と分析が順調に進み、その研究成果を学会において発表することができた。その成果の一部を学会誌に掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に計画していた「笑い(活動的快)が入眠過程に及ぼす影響」については、実験の準備が整い次第、実験を実施する予定である。新型コロナウイルスの影響により実験の開始時期が遅くなる可能性もあるが、今後、感染リスクに十分注意を払いながら、実験を実施する予定である。秋冬以降、新型コロナウイルスの感染が再び拡大する可能性もあることから、3年目である2021年度に予定していた、「リラックスイメージ(非活動的快)が入眠過程に及ぼす影響」については3年目を待たず、できるだけ早く実験に着手できるよう準備を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、2~3月にかけて実施予定であった実験ができなくなり、研究成果を発表する予定であった研究集会にも参加できなくなった。そのため、実験のための被検者謝金と人件費および旅費に残額が生じた。2020年度は、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえながら、なるべく早く実験にとりかかる予定である。
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