2019 Fiscal Year Research-status Report
心理的暴力(束縛行為)の被害の認識を阻害する要因の解明
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19K03352
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Research Institution | Shigakkan University |
Principal Investigator |
笹竹 英穂 至学館大学, 健康科学部, 教授 (00319229)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | デートDV / 心理的暴力 / 束縛行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
両方向暴力の実態について,これまで収集したデータに基づいて分析し,その結果を「恋人間の心理的暴力(束縛行為)の両方向暴力の実態-被害者であって加害者でもあるカップルの割合-」というテーマで,日本心理臨床学会第38回大会で発表した。さらにこの研究を論文「デートDVにおける両方向暴力の実態とその生起の理由についての学生の認識」にまとめ,至学館大学教育研究紀要第21号に投稿し採択された。この研究によって,交際相手から束縛行為に従うことを求められた場合,逆に交際相手に対してその束縛行為を守ることを要求し,お互いが束縛行為に従うことによって,対等な関係を構築しようとしていることが明らかとなった。デートDV防止教育では,人権保護の観点から,交際相手との対等な関係を形成することの大切さを強調するが,両方向暴力によって対等な関係を形成しているという若者の理屈が示されたことになり,デートDV防止教育の在り方を見直す必要が示唆された。 また「交際相手からの心理的暴力(束縛行為)に対する対処方略の類型化の試み―マイナスの感情とプラスの感情の折り合いをどのようにつけるのかー」というテーマで,日本犯罪心理学会第第57回大会で発表を行った。この研究は,交際相手から束縛行為に従うことを求められ,プラスとマイナスの感情を持った場合,どのような対処をするのかについて,8パターンに分類する試みを行ったものである。この8パターンは概ね妥当ではないかというコメントが多く寄せられた。 さらに「デートDV防止講座における経時的効果の探索的研究」というテーマで,日本カウンセリング学会第52回大会で発表した。この研究は,デートDV防止をテーマにした授業を行い, 3ヶ月後に各束縛行為をデートDVであるかどうかを判断できるかについて検証したものである。束縛行為によって判断にばらつきがあることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、論文1本が掲載され、また学会発表を3本行ったことから、年度当初の計画が順調に進んでいるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き,「交際相手からの心理的暴力(束縛行為)に対する対処方略の類型化の試み」の研究を行う予定である。今年度は,束縛行為がエスカレートした場合の再度の対処方略についてデータを整理し,分析すること検討している。この研究は,束縛行為がエスカレートして,最初の対処方略があまり効果が見られなかった場合に,再度どのような対処方略を取るかということを明らかにすることを目的としている。束縛行為がエスカレートしても,拒否できなかったり,自分で決定できないなどの場合,その後にトラブルが生じる危険性が高まると考えられる。したがって再度の対処方略を分析することが重要であると考えられる。 また今年度も引き続き,「デートDV防止講座における経時的効果の探索的研究」の研究を行う予定である。とりあえずこれまでの予備調査をまとめて,論文として発表する予定である。この予備調査では,授業終了3ヶ月後の効果が,束縛行為によって異なったことが示された。そのため,今年度は効果の違いに影響を与える要因を投入して,仮説どおりの結果が得られるかどうかを検証したいと考えている。仮に仮説どおりの結果が得られれば,コントロール群を設定して本格的な効果の検証の調査を実施することを計画している。 またデートDV防止教育の効果をあげるために,一般的にデートDVに対してどのような疑問を持ちやすいかを調査して,それを分類する試みを開始することを検討している。デートDVに対して若者は誤った認識,誤解,信念を持つ場合があることが先行研究で指摘されており,その具体的内容を明らかにすることを目的としたものである。これが明らかになることによって,その誤った認識などを正すことが可能となり,デートDV防止教育の効果が上がることが期待できる。
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Causes of Carryover |
日本家族心理学会に参加を取りやめたために、次年度使用額が生じた。この金額については、2020年度に日本家族心理学会に参加することに使用する予定である。
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Research Products
(4 results)