2020 Fiscal Year Research-status Report
リハビリテーション病院等における音楽療法の評価表マニュアル作成に関する実践的研究
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19K03358
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
小原 依子 神戸女子大学, 文学部, 教授 (40388319)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 音楽療法 / リハビリテーション / 評価表開発 / 効果判定 / マニュアル |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、医療面でも注目され、臨床応用されてきている「音楽療法」は、少子高齢社会対策や予防医学、健康増進の推進の動向にも伴い、福祉、保健、教育場面 で大きな拡がりをみせている。今後ますます社会への定着を図るには、その効果の科学的裏付けが求められる。これまで、筆者は独自に開発を行った「音楽療法チェックリスト評価表(MTCL-YK)」をさらに多様な適応疾患・障害への適用を可能にするため、全国的に音楽療法が重要視されている対象領域である「高齢者用」(MTCL-YK(S)、そして「注意障害用」(MTCL-YK(DOA)、「パーキンソン病用」(MTCL-YK(PD))の開発・作成を試みてきた。本研究では、この3種類の評価表共通の「マニュアル作成」を行うことを目的としている。 本研究の令和2年度の研究実施計画は、選定された音楽療法プログラムを実施する「高齢者対象」の音楽療法現場において、研究協力者により、MTCL-YK(S)を用いて音楽療法の対象者個々人についての評価を行い、評価のしづらさや問題点を明らかにし、評価表使用に際しての視点・視座を確認し、共通マニュアルの項目を作成し(マニュアル-1作成)、信頼性検証を行っていくことであった。しかし。令和2年2月頃より、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、本研究で予定していた高齢者領域の音楽療法実践は中止となり再開の見通しはなく、「高齢者対象」の評価表のマニュアル作成は着手することができなかった。そのため、音楽療法実践が継続されているリハビリテーション病院での「パーキンソン病」対象の評価表について、本研究の令和4年度に計画していたマニュアル作成に着手することとし、マニュアルに入れるべき具体的項目について検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の令和2年度の研究実施計画は、下記の通りであった。①選定された音楽療法プログラムを実施する「高齢者対象」の音楽療法現場において、研究協力者により、MTCL-YK(S)を用いて音楽療法の評価を行い、共通マニュアルの項目を作成し(マニュアル-1作成)、信頼性検証を行う。②「高齢者対象」の音楽療法実践の録画映像を、研究協力者間で同時に視聴し、行動観察を行うう。その際、(a)マニュアル-1を用いないで評価を行った場合と、(b)マニュアル-1を用いて評価を行った場合とに分けて評価を行い、評価者間の評価のズレが(b)において減少しているかどうかを数量的に分析し、問題点としてあがった点についてさらに整理を行い、修正版マニュアル-2を検討する。 しかし、進捗としては令和2年2月頃より、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、本研究対象で予定していた高齢者領域の音楽療法実践は中止となり、「高齢者対象」の評価表のマニュアル作成は着手することができなかった。そのため、音楽療法実践が継続されているリハビリテーション病院での、特に「パーキンソン病対象」の評価表について、そのマニュアル作成(令和4年度実施予定の内容)に着手することとし、研究協力者間で音楽療法実践録画を同時に視聴し、マニュアルに入れるべき具体的項目について具体的項目を開始した。 従来から実施している研究協力者間の研究会は対面方式であったが、昨年度よりオンライン開催を試み、機器環境の整備が整った。音楽療法実践録画の同時視聴についてもより詳細な分析が可能になるといった進展も見られる。情報管理においては、倫理的な配慮を最大限に行い、データを取り扱っている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に入ってからも、兵庫県には緊急事態宣言が発出され、「高齢者対象」の音楽療法実践は中止となっている。そのため令和2年度に予定していた「高齢者対象」の共通マニュアルの項目の作成は保留・延期し、音楽療法実践が継続されているリハビリテーション病院での「パーキンソン病対象」の評価表について、令和2年度に着手し始めた具体的項目の検討とマニュアル作成を引き続き行っていきたいと考える。 手順としては本研究の「第4段階」の内容となる。「第4段階:①」では、選定された音楽療法プログラムを実施する「パーキンソン病対象」の音楽療法現場において、研究協力者により、MTCL-YK(PD)を用いて音楽療法の対象者個々人についての評価を行い、評価のしづらさや問題点を明らかにし、評価表使用に際しての視点・視座を確認する。ここで問題として上がった点が、評価者間の評価のズレを生じさせる要素(評価表の「信頼性」を低める要素)であるため、問題点を整理し、共通マニュアルに反映させていく(マニュアル-5作成)。そして、②「パーキンソン病対象」の音楽療法実践の録画映像を、研究協力者間で同時に視聴し、行動観察を行う。その際、(a)マニュアル-5を用いないで評価を行った場合と、(b)マニュアル-5を用いて評価を行った場合とに分けて評価を行い、評価者間の評価のズレが(b)において減少しているかどうかを数量的に分析する。問題点としてあがった点についてさらに整理を行い、修正版マニュアル-6を検討する。本年度は、このような研究内容の変更で進めていく予定であるが、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、今後さらに音楽療法実践の継続が難しくなる可能性も考えられる。各実践現場において安全を期したうえで慎重に進めるために、臨床実践の対象領域など調整を図りながら、研究を進めていきたいと考える。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルス感染拡大防止のため、「高齢者対象」の音楽療法実践は中止のままとなっている。そのため、現在、音楽療法実践が継続されているリハビリテーション病院での「パーキンソン病対象」の評価表について、マニュアル作成のための具体的項目を検討し始めた。「高齢者対象」の音楽療法実践が中止となったことや、急遽、研究計画の順番を変更したことで、当初の計画通りに物品購入を進めることができなかったため、265,395円、次年度に繰り越すこととなった。 (使用計画)使用計画としては、交付予定の直接経費は500,000円であり、この中の「物品・消耗品」「その他」で265,395円を用いていく予定である。
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