2022 Fiscal Year Research-status Report
リハビリテーション病院等における音楽療法の評価表マニュアル作成に関する実践的研究
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19K03358
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
小原 依子 神戸女子大学, 心理学部, 教授 (40388319)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 音楽療法 / リハビリテーション / 評価表開発 / プログラム開発 / パーキンソン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、医療面でも注目され臨床応用されてきている「音楽療法」は、少子高齢社会対策や予防医学、健康増進の推進の動向にも伴い、福祉、保健、教育場面で大きな拡がりをみせている。今後ますます社会への定着を図るには、その効果の科学的裏付けが求められる。これまで、筆者は独自に開発を行った「音楽療法チェックリスト評価表(MTCL-YK)」をさらに多様な適応疾患・障害への適用を可能にするため、全国的に音楽療法が重要視されている対象領域である「高齢者用」(MTCL-YK(S))、そして「注意障害用」(MTCL-YK(DOA))、「パーキンソン病用」(MTCL-YK(PD))の開発・作成を試みてきた。本研究では、この3種類の評価表共通の「マニュアル作成」を行うことを目的としている。 本研究の手順としては、令和2年度に「高齢者対象」のマニュアルを作成しその体裁をもとに、令和3年度以降「注意障害対象」「パーキンソン病対象」のマニュアルの具体的項目を検討し、令和4年度は評価表共通の「マニュアル作成」を目指していたが、令和2年2月頃より新型コロナウイルス感染拡大防止のために、本研究で予定していた高齢者領域の音楽療法実践は中止となり令和5年度4月現在も再開の見通しはたっていない。「パーキンソン病対象」においても、音楽療法実践自体が中止になった期間が出現し、その後再開しても「歌わないセッション」が求められ、従来のプログラム実施が難しい期間も続いた。効果判定の尺度開発には「有効なプログラム実施」が大前提となる。そのため感染対策を考慮した新たな音楽療法プログラムとして「フォルメン線描」を導入したアプローチを試みた。パーキンソン病症候群例において書字障害として小字症が出現することが知られているが、音楽療法プログラムに「フォルメン線描」を導入することは小字症の改善に向けたアプローチとして有効であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の令和4年度の研究実施計画は、「①MTCL-YK(S)・MTCL-YK(DOA)・MTCL-YK(PD)の共通マニュアル「MTCL-YK用共通マニュアル」を作成する。さらに本研究においての対象施設・病院以外の実践現場でも使用し検証を進める。」であった。 しかし、新型コロナウイルスの影響で令和2年2月頃より、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、本研究で予定していた高齢者領域の音楽療法実践は中止となり令和5年度4月現在も再開の見通しはたっていない。「パーキンソン病対象」においても、音楽療法実践自体が中止になった期間が出現し、その後再開しても「歌わないセッション」が求められ、従来のプログラム実施が難しい期間も続いた。本研究の目的である、「効果判定の尺度開発とマニュアル作成」には各臨床実践現場における有効なプログラム実施が大前提となる。従来の治療構造が制約されるなかで、有効なアプローチを模索することが医療現場で求められた。そのため感染対策を考慮した新たな音楽療法プログラム開発を試みることとなった。これまで会話に困難を持つパーキンソン病患者に筆談を用いたり、小字症患者へのアプローチとしてフォルメン線描を行なってきた実践経験をもとに、〈歌わないプログラム〉に「イメージ呼吸法」と「フォルメン線描」を行うことは有効であると考え、歌唱に代わる課題として導入した。「イメージ呼吸法」「フォルメン線描」を導入したアプローチを実施しその効果を検証を行った結果、小字症を有するパーキンソン病ケースにおいて、「フォルメン線描」を導入することは小字症の改善に向けたアプローチとして有効であることが示唆された。 今後も新たな音楽療法プログラムの効果検証を継続して行いながら、評価表マニュアル開発に向けて取り組んでいく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの影響で、令和5年度に入ってからも「高齢者対象」の音楽療法実践は再開の見通しがたっていない。また、リハビリテーション病院での「パーキンソン病対象」においても、急遽「歌わないセッション」が求められる期間もあったことから、音楽療法プログラムとして、このような緊急事態に対応可能なプログラムの準備が必須となった。臨床現場での実践研究は、対象者の治療という目的を第一に考えながら進める必要がある。そのため、令和3年度末の時期から、新型コロナウイルスの感染防止を考慮した新たな音楽療法プログラムとして、「イメージ呼吸法」「フォルメン線描」を導入したアプローチを実施し、その効果についての検証を行った。その結果、小字症を有するパーキンソン病ケースにおいて、新たな開発プログラムが小字症の改善に向けて有効であることが示唆された。効果判定の尺度開発には対象者にとって有効なプログラム実施が大前提となるため、令和5年度もリハビリテーション病院での臨床実践を行いながら、新たに開発したプログラムの有効性検証を実施していく計画である。 今後も治療目標を基本とし、安全を期した音楽療法実践を行いながら、その効果判定のための評価表のマニュアル作成に向けて臨床研究を継続していきたいと考える。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルスの感染防止のため、令和2年2月より「高齢者対象」の音楽療法実践は中止となり、令和5年4月現在も再開の見通しがたっていない状況である。またリハビリテーション病院においても、従来の音楽療法プログラムを実施できない期間があった。そのため、研究計画の順番を変更したり、臨床現場での新たな音楽療法プログラムの考案が必要になるなどの対応が必要となり、当初の計画通りに物品購入を進めることができなかった。411,332円、次年度に繰り越すこととなった。 (使用計画)使用計画としては、「物品・消耗品」「その他」で411,332円を用いていく予定である。
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Research Products
(1 results)