2021 Fiscal Year Research-status Report
The Study about Stress Regulation and Psychological Coping System in Social welfare support workers by Action research
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19K03359
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 安子 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (60388212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松端 克文 武庫川女子大学短期大学部, 心理・人間関係学科, 教授 (90280247)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ストレス制御 / 福祉専門職 / コロナ禍 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは今般のCOVID-19の感染拡大に鑑み,予定していた対面でのメンタルヘルス研修を行わななかった。代替措置として以下のような手続きで2018年に収集したコロナ禍前のデータと2020年~2021年に取集したコロナ禍の中でのデータ比較を行った。これにより,コロナ禍が福祉専門職のストレス制御の仕組みにどのような影響を及ぼしているのかを明らかにすることを試みた。 具体的手続きは以下の通りである。鹿児島県知的障がい者福祉協会に協力を得て郵送での追加調査を行った。また神戸市社会福祉協議会の協力を得てメンタルヘルス研修の教材に今回の研究で用いた質問紙を使用し,研修会参加者に個人結果を出してもらい,その解釈の仕方を講義する,という「調査・研修一体型」のメンタルヘルス研修を実施した。ここでは参加者に無記名・任意で記入済み質問紙を収集し,データに加えた。 その結果,福祉専門職はコロナ禍にあってもストレスとなる情報を自己増幅しない認知傾向を維持しており,援助の場を安定的に保っていることが分かった。しかし,ストレス制御の仕組みには性差が認めれれた。コロナ禍にあっては男性福祉職はストレス制御の鍵となっている体力への自信の低下,仕事への誇りと体調管理の葛藤が認められた。また女性福祉職は体調不全をカバーする力の低下,メンタルヘルス不全を抑制してくれる同僚がいても,本人の無理を止めてくれることはできない,といいことが明らかになった。このことから現場にゆとりがなくなり福祉専門職は忙殺されているという職場環境が見て取れた。 また,本来2020年7月に行われるはずだった第32回国際心理学会議(於:チェコ)が2021年7月に延期され,さらに全面遠隔開催となった。この学会では既に発表が決まっていたため,予定通り遠隔参加した。ポスター発表であったが,付加的な説明動画やチャットによる討議にも参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来は2021年度が最終年度であったが予定していた対面でのメンタルヘルス研修ができなくなったため期間延長を許していただきかつ調査の構造を方向転換した。このことと国際学会で得た知見から,期間は遅れたがそれを上回る新しい発見があったため。 調査をパネル調査はできなかったが「コロナ禍前後の比較という」枠組みに変更したことにより,現実に福祉専門職に何が起こっているのかを明らかにすることができた。 また国際心理学会議での討議では,対人援助職者の感情労働というトピックはほとんどなかった。「感情労働」という概念があまり一般的でないことは大きな発見であった。東欧諸国からの演題が多かったが,この研究テーマ自体がグローバルでないのか,国による文化差から生じる研究テーマの注目度の違いのか,明らかにする必要を感じた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度が本研究課題の最終年度である。研究のまとめと次の研究につながる方向に沿ってパイロット・スタディを行う。「メンタルヘルス研修」の在り方への視点を転換し,メンタルヘルスについて研修するのではなく,あるフィールドが抱え,かつ共通認識ている課題(例:行為障害への対応)についての研修を実施し,その前後でのストレス制御の仕組みがどのように変化しているか,を調査する予定である。 併せて諸外国では福祉専門職はどのように自らのワークエンゲージメントを高めているのか,まず文献研究を行い,我が国の福祉専門職の社会での立ち位置についてもストレス制御という視点から明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,当初考えていた「事例検討型メンタルヘルス研修」を対面で実施することが困難になった。今後も当面は難しいと考えられる。そこで視点を変え,「事業所が困っていることを解決することによってストレス制御の仕方がより恒常的に健康的になるのではないか」という仮説のもとで,パイロットスタディを実施する予定である。 当初は福祉専門職のストレス制御特徴をもとに,「事例検討型メンタルヘルス研修」を考えていた。しかしながらこれまでの調査で明らかになったストレス制御特徴はその集団の特徴である。コロナ禍での調査によって,当該組織の直面している課題を乗り越えようとすることによってこそメンタルヘルスは良好になるのではないか,と考えられた。この考え方ははこれまでにない視点といえる。 そこで「直面課題への取り組みによるストレス制御特徴の変化」というデザインでpre調査(本研究課題構成員による)→ある施設が直面している課題への研修(その課題に精通している組織外の専門家による)→施設の課題への取り組み→post調査(本研究課題構成員による)を実施する。
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Research Products
(2 results)