2022 Fiscal Year Research-status Report
Visual motion processing for self-motion perception and underlying brain network
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19K03367
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
蘆田 宏 京都大学, 文学研究科, 教授 (20293847)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 視知覚 / 運動視 / 姿勢制御 / バーチャルリアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
VRヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いて視覚運動刺激による身体動揺を測定する実験を前年度までに実施してきた。本年度はデータ解析を進め、成果を学会発表および国際誌論文として発表することができた(Ashida & Fujimoto, 2022)。具体的には、前後方向への移動を模したオプティックフロー刺激の方向を周期的に反転させ、それと同期した頭部運動と重心移動を測定した。視覚による姿勢制御への影響を調べるには、体重計のように立って足裏からの圧力を計測する重心計を用いることが多いが、頭部運動はHMDによって比較的容易に記録できるため、これまで我々の研究でも頭部運動を指標として用いてきた(Fujimoto & Ashida, 2019, 2020など)。しかし、ヒトの身体は複雑な節構造を持っているため、頭部と身体全体の動きが必ずしも一致するわけではない。本研究により、少なくともオプティックフローに対する応答を見る上では、頭部運動と重心移動に顕著な差はなく、頭部運動測定に基づく議論に十分意味があることが明らかになった。 これまでの研究から、視覚による姿勢制御のためには下視野の情報が重要であることがわかってきた(Gibson, 1950; Fujimoto & Ashida, 2019など)。しかしながら、これまでの結果を見ると、必ずしも視覚運動情報処理において下視野が上視野より優れているというわけではない。特に姿勢制御に重要と思われる速さの知覚についての研究は少なく明確な結論を得難いため、あらためて上下視野の速さ知覚を比較する実験を行なった。コロナ禍のためデータが十分でないので、引き続き実験を行なっている。 これまでの研究成果をまとめた章を含む共著本が出版された(安井・マルソー, 2022, ISBN978-4-653-04632-5)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は当初2021年度までの計画であったが、コロナ禍で実験研究に大きな制約を受けたことにより、今年度までの延長を認められた。本年度はこれまでの成果を原著論文や書籍の一部として出版することができた点で、研究のまとめとして概ね順調に進展したと評価できる部分も多い。 しかしながら、感染症の状況は冬までには大きく改善せず、特に研究に専念すべき夏期に大きな波(第7波)が生じたことで、新たな実験的成果を得ることが難しかった。特に、fMRI研究の進展を得られなかったこと、また、最終年度に計画していた国際学会発表を1年の延長を経ても実施できなかった点は「やや遅れている」と言わざるを得ない。 幸い再度の延長が認められたため、2023年度に国際学会発表を行う準備を進めており、すでに採択されている。 関連して、昨年度報告した元大学院生による関連研究(Fujimoto & Ashida, 2022)について、垂直方向の知覚における床・天井平面の重要性に関するVR心理物理実験が行われ、共著者として国際学会発表及び論文発表を予定している。 fMRI研究については、前年度までに得られたデータ解析を行ったが、特に視覚提示環境の問題などが明らかになり、このまま継続しても成果が期待できないため、別の形での実施を模索している。年度後半からは岡崎生理学研究所での共同研究が認められ、本研究の計画を一部そちらで実施することを考えている。より精細な機能画像が得られる7Tスキャナの利用も含め、計画をリファインし、実施のための資金獲得を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍による再度の期間延長を認めていただいた。2023年8月の国際学会(ECVP 2023, Cyprus)での発表がすでに採択されている。残りの予算が限られるので、この発表で本研究全体を締めることになるが、引き続き成果の論文発表と、本研究を継承する新たな研究費獲得を目指したい。 また、予備的観察にとどまったfMRI研究は、本課題とが別の形で進めるよう準備を進めており、これまで得られた知見を今後の研究に活かしていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍が長引いたため、年度内に予定していた国際学会発表が行えなかった。次年度への延長が認められたため、8月の学会に参加を申し込み、採択が決まっている。残額は全て旅費及び発表費用のために使用する。
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