2019 Fiscal Year Research-status Report
ベイズ最適化による未知の多次元心理物理関数の推定手法の構築と応用分野の開拓
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19K03375
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
小森 政嗣 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 教授 (60352019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠里 由佳子 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (80346171)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ベイズ最適化 / ガウス過程回帰 / 心理物理関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ベイズ最適化を実験心理学的な課題,特に物理量が多次元になる心理物理学的課題に適用するための手法の検討および構築を行い,これにより未知の多次元心理物理関数を逐次的に効率的に推定する新たな実験計画法の提案を行うことを目指したものである.初年度である2019年度は(1) 二肢選択ベイズ最適化を用いた逐次的心理物理実験システムの構築及び検証,(2) ガウス過程順序回帰を用いた逐次的心理物理実験システムの構築及び検証,(3) 手法の適用分野の検討を行った. (1)強制二肢選択課題に基づくベイズ最適化を行う実験・分析システムを,二肢選択ガウス過程回帰 (Chuら, 2005)などを参考にして構築した.また,このシステムを用いて,かわいい形状の探索的検討を行った.ここでは,形状を表す多変量の物理量とその形状に対する主観評価の関係を表す心理物理関数の推定を行っている.これらを通して,本手法が心理物理学的な検討に有用な手法であるかについて検討を行った.また,複数の実験参加者がいる場合の平均的な心理物理関数の予測平均・分散を推定する手法について検討を行った.さらに,さまざまな獲得関数について心理学的な検討における有効性の検討を行った. (2) ガウス過程順序回帰 (Chuら, 2005)に基づいてリッカート尺度への逐次的回答によりベイズ最適化を行い,実際に逐次的な実験を行うことができるシステムを構築した.さらに,計算の高速化にも取り組んだ.また(1)と同様に獲得関数や個人差の扱い方に関する検討も行っている. (3) 上記のシステムを用いて,かわいい形状の検討,音響的な好みの検討,配色の好みの検討,ブーバ・キキ効果を強くもたらす形状の探索など従来の心理物理実験のパラダイムでは困難であった検討課題に取り組み,本手法が適応可能な分野の開拓にも取り組んだ.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず本研究計画では初年度に,強制二肢選択の回答に対してガウス過程回帰を適用するための条件となる,ガウス過程回帰とプロビット/ロジットモデルの統合による実験計画手法の構築を目指していた.現在のところ,プロビットモデルに基づく心理物理学的実験システムの構築は行ったものの,逐次的な実験計画に適用するには処理速度が遅いため,現在計算方法の改善に取り組んでいる. また初年度には二肢/多肢選択・順位付け課題における獲得関数方略の検討も予定していた.様々な獲得関数方略について検討を行った結果,順位付け課題においては,研究目的に応じて有効な獲得関数は大きく異なることが示唆された.二肢選択課題については適切な獲得関数がどの様になるかはまだ検討できていない. 上記のような,システムと手法の構築を目指した研究を推進する一方で,ガウス過程回帰手法,ベイズ最適化手法が適した実験心理学的テーマの検討も行っている.例えば,Komori & Nittono(2013)のデータに基づきベイズ最適化による個人および集団の顔のプリファレンスの全体像を明らかにする試みを行い,顔形状空間とそれに対する評価の関係の検討を行った.またこの手法を形状や顔画像のみならず複雑な音色や配色の好みに関する検討.感性工学的な検討に有効であることが示唆されている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在研究上,課題となっていることは2つある.一つは得られた結果の妥当性の評価手法がまだ明確ではないことである.2020年度では,まず結果の妥当性・信頼性を示す手法の検討を進めていく.また,現状では構築したシステムの処理速度が実験的検討の大きな足かせとなっている.2020年度では,機械学習用のライブラリの積極的な活用により,処理速度の問題の解決を目指す.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は,2020年2月以降のコロナウイルスの感染拡大に伴って参加予定であった学会が中止になったこと,および本研究の内容に適した国際会議の開催が2019年度内ではなく2020年度に集中していたことが挙げられる.
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Research Products
(6 results)