2019 Fiscal Year Research-status Report
性格特性と認知スタイルに基づく視覚的注意制御の個人差の解明
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19K03380
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 亮一 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (30626073)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 個人差 / 視覚的注意 / マインドフルネス / 個人特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、人間の視覚情報処理の中心的な役割を果たす注意の機能(注意制御)の個人差について、性格等の特性を要因として着目した研究を行う。注意の制御は、覚醒(課題に対する準備を整える)、定位(適切な位置・対象に注意を向ける)、競合解消(不要な情報を抑制する)の三成分に分けられると言われている。それらの成分が性格特性等によってどのように変わるかを、探索的に検討する。 2019年度は、注意の三成分を一度に測定できる課題(注意ネットワーク課題)を用いた検討を行った。注意制御の各成分について、TIPI-Jを用いた個人の性格特性、BIS/BAS質問紙を用いた行動抑制系・行動賦活系の特性によって違いが見られるかを探索的に検討した。その結果、行動抑制の傾向と、注意の覚醒および競合解消に関係があることが示唆された。 また、マインドフルネス瞑想と注意制御の関係も調べた。具体的には、マインドフルネス瞑想前後で注意ネットワーク課題を行い、その成績が瞑想によって向上するかを調べる実験を行った。マインドフルネス瞑想は、大きく集中瞑想と洞察瞑想に分けられるが、それぞれの瞑想が注意制御機能の向上に効果があるかはよくわかっていない。そこで、実験参加者を、集中瞑想・洞察瞑想を行う群に分け、注意ネットワーク課題の成績の変化を調べた。その結果、30分程度の瞑想を行っても、平均値としてはどちらの瞑想も注意機能を大きく向上させることはなかったが、個人のマインドフルネス傾向(普段からマインドフルネス的な行動をしているか)を加味すると、効果に違いが見られた。具体的には、マインドフルネス傾向が低い人ほど集中瞑想によって注意の覚醒機能が向上しやすく、逆にマインドフルネス傾向が高い人は洞察瞑想によって注意の覚醒機能が向上しやすいことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個人の性格特性と注意制御機能の関係について調べる実験は、予定していたいくつかの実験のデータを取り終えることができなかった。また、得られたデータの分析も、基本的なものしか行えていない。その点では進捗は遅れている。 しかし一方で、本研究課題の後半で実施予定だったマインドフルネス瞑想と絡めた実験を実施できたことで、個人特性を加味した注意機能向上トレーニングについての知見を得ることができた。 全体的に見れば、おおむね進捗状況はよいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに取得しているデータについては、まだ検討しきれていないため、より詳細に分析を行い、成果としてまとめる。また、社会状況が改善し、人を対象とした実験室実験が可能になったら、予定していた実験データを継続して取得する。 今後も、主に注意ネットワーク課題を用いた実験室実験と質問紙調査を組み合わせた研究を進める予定であるが、他の実験課題を用いた注意制御の個人差研究についても検討していく。マインドフルネス瞑想についても、どのような瞑想方法が効果的なのか、個人特性に応じた違いを考慮して検討を進める。
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Causes of Carryover |
人を対象にした心理学実験の遂行が予定通り進まず、考えていたいくつかの実験が実施できなかったため、主に人件費の使用額が少なくなった。それに伴い、データをまとめ論文執筆をしようと計画していたが、その段階までたどり着かず、英文校閲費として使用予定だった分に余りが生じた。 そのため、社会状況が改善し、心理学実験の実施ができるようになったら、実験データを取得するために、人件費として使用する。 また、現在取り終えている実験データの分析が完了したら、それをまとめたうえで、学会発表および論文発表のための準備(英文校閲費など)に使用する予定である。その際、研究発表にむけてスムーズに事を進めるため、実験データの解析補助業務の依頼を考えており、その人件費も使用する予定である。
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