2019 Fiscal Year Research-status Report
2者間プロソディ変調による情動伝染の時系列的機序の解明
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19K03386
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
北村 美穂 早稲田大学, 高等研究所, 准教授(任期付) (80748799)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 音声プロソディ / 印象形成 / コミュニケーション / 感情伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
DAVID (Da Amazing Voice Inflection Device (Aucoutuier et al., 2016))は、リアルタイムでプロソディ変調を可能とする音声変調システムである。本課題では、これを用いて対話者の音声プロソディを陽性・陰性感情方向へ変化させ、会話時の感情や印象形成にどのような影響を及ぼすか明らかにすることを目的としている。初年度は、基礎的な実験を複数実施し、2者間対話時の心理ならびに生理指標の取得を会話を邪魔にならずに計測可能な実験装置のセットアップをおこなった。またこれらの実験を通して一定の知見を得ることができた。実験の基本的なプロトコルは以下の通りである。実験参加者はそれぞれヘッドフォンから対話者の声を聴きながら与えられたスクリプトを互いに読み合わせ、課題前/中/後について自身と相手の感情評定、ならびに対話者や会話の印象を評定した。実験の結果、DAVIDによる音声変調は話者の感情よりも対人印象形成により大きな影響を及ぼす可能性が示唆された。これまで報告されてきた単独発話時のDAVIDによる音声変調は、話者自身の感情状態に変容をもたらすことが示されてきたが、2者間では対話者の存在によって変調が対人印象に帰属される可能性が考えられる。これらの成果の一部は、2019年度に国内学会にて発表し、また2020年内に2件の国際会議での発表が採択されている。また、心理データに加え、心拍、皮膚電気反射についての生理的変化の計測も試みている。予備的データの解析を進め次年度以降はさらに安定したデータ計測を行い、信頼性の高い知見の創出を目指す。本課題は、対話場面での非言語的な感情シグナルの音声変調がコミュニケーションに及ぼす影響を明らかにするもので、社会的場面において声による集団的感情の調節が可能かどうかを問う重要な学術的課題に貢献する研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に想定していた基本的な実験を実施でき、一定の成果を得た。特に複数の予備的な実験を経て2者での会話を行いながらの心理・生理計測装置のセットアップが順調に完成したことは、研究遂行上のメリットとなり、今後の進捗に期待が持てる初年度となった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画で予定していた通り、2年度は2者会話状況において、特に音声会話変調を2者間で同調・非同調とした場合の印象変容実験を実施する予定である。しかしながら、新型コロナウィルスの影響で、対面による実験実施が完全にストップしており、すでに課題遂行に遅れが生じることが予想される。状況を鑑みながら、まずは昨年度計測したデータの再解析を行い、新たな知見の創出に全力をあげたい。
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Causes of Carryover |
本年実施した実験についての補助員ならびに参加者への謝礼、および英文校閲費について、協力研究者の予算ならびに学内研究費により支出したため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(4 results)