2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of rat behavior model of free-rider avoidance
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19K03387
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
畑 敏道 同志社大学, 心理学部, 教授 (50399044)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フリーライダー / 不公平忌避 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ラットが不公平な報酬の分配を忌避することが報告されている(不公平忌避、Overliessen et al., 2016)。本研究では、自らの行動の成果に"ただ乗り"されることも,不公平な報酬の分配であるととらえ、ラットが"ただ乗り"されることを避ける(フリーライダー忌避)のではないかと考え、研究を計画した。実験1では、1つのレバーと2つの餌皿、およびそれぞれの餌皿の上にランプが設置されたオペラント箱を用いた。実験の条件は3つあった。いずれの条件でも、ラットAがレバーを押すと、餌皿1,次いで餌皿2に餌が提示された。ラットAは餌皿2の餌を食べることができたが、餌皿1は透明な壁の向こうにあるので、それに接近したり、そこに提示された餌を食べたりすることはできなかった。統制条件では、ラットAのみをオペラント箱に入れた。独り占め条件では、ラットAに加えて、自らレバーは押せず餌皿1に提示された餌も食べられないラットBを入れた。ただ乗られ条件では、ラットAに加えて、自らレバーは押せないが,餌皿1に提示された餌は食べられるラットBを入れた。統制条件および独り占め条件と比較して、ただ乗られ条件においてレバー押し頻度が少なければ、ただ乗りを忌避していると考えた。結果、条件間でレバー押し頻度には差が見られなかった。実験2では装置と実験手続きを改良し,再度同様の実験を実施したが、やはり条件間でレバー押し頻度には差が見られなかった。したがって、当該年度の研究では、ラットのフリーライダー忌避を示す証拠は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本申請課題の前提となった我々の研究では、ラットがフリーライダー忌避を示すことが示唆された。しかし、実験デザイン上、他の解釈可能性があったため、本研究ではラットAが必ず餌を得られるようにし、ラットのフリーライダー忌避を頑健に示すことのできる課題を考案した後、より発展的な実験を実施してゆく予定であった。にもかかわらず、この実験設定ではフリーライダー忌避を示す証拠が得られなかったため、後に予定していた実験にも遅れが生じることが予想されることから、研究の進展はやや遅れていると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、フリーライダー忌避を頑健に示すことのできる課題を模索する必要がある。実験の進展にともない、条件設定が複雑になってきたので、より単純な実験設定に一端立ち返って検討する必要があると思われる。 最近、我々の研究室では、胎生期での薬物暴露による出生後の社会的行動の変化について研究している。フリーライダー忌避は自己と他者の報酬や労働を比較した結果生じる社会的な行動であると考えられるため、両研究を結びつけた発展的研究も模索している。 いずれにせよ、基本的な行動課題を洗練させることが最重要課題である。
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Causes of Carryover |
参加予定だった2つの学会に参加できなかったため、旅費を使用しなかった。一方は第37回日本生理心理学会、他方は第79回日本動物心理学会であった。前者は休職を含む体調不良のため欠席、後者は台風のため学会が中止された。当該研究課題を卒業論文の学生の実験として実施したため、人件費・謝金が発生しなかった。次年度以降,実験装置・器具の購入と補習,試薬類の購入、実験動物関連費として120万円程度,学会出張費として50万円程度,実験・分析補助や英文校閲などの人件費・謝金として40万円程度,その他の雑費として40万円程度を使用予定である。
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