2019 Fiscal Year Research-status Report
霊長類扁桃体における情動情報と社会的情報の統合・制御機序の解明
Project/Area Number |
19K03388
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
倉岡 康治 関西医科大学, 医学部, 助教 (10581647)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 扁桃体 / ニューロン / 社会的情報 / 報酬 / サル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、霊長類扁桃体が、報酬情報と社会的情報を統合および制御していく過程を、2つの情報を分けて提示し、行動学的・生理学的・薬理学的手法を用いて解明することを目的としている。 上記の目的のため、サルに対して目の前の画面の左右に提示される標的に対して視線を動かす課題を課し、課題中に視覚刺激を提示した。課題の最後に得られる報酬量に差をつけることで、異なる視覚刺激に対して異なる報酬情報を条件づけた。さらに視覚刺激は、他個体顔画像と幾何学図形を用意して、社会的情報に違いをつけた。 まず、サルが画面に提示される画像より社会的情報の違いを受け取っているか確かめるため、図形を見ている際の視線の動きを解析した。その結果、画像領域に視線を向けている時間は、他個体画像のほうが幾何学図形よりも長かった。従って、サルは画像の社会的情報の違いを受け取り、より社会的情報が多い刺激に対して、より注意を向けていることが分かった。 次に、刺激に対する自律神経応答を調べるため、画像を見ている際の瞳孔径を刺激間で比べたところ、他個体画像に対する瞳孔径のほうが、幾何学図形に対するそれよりも大きかった。瞳孔径の大きさは交感神経の興奮を反映するものなので、サルが社会的情報の豊富な視覚刺激を見ることで、交感神経の興奮が高まっていることが分かった。 さらに、単一ニューロン応答を記録したところ、上記の瞳孔径の大きさは扁桃体外側核ニューロン応答の大きさと正の相関を示すことが分かった。従って、扁桃体外側核ニューロンは、社会的情報を処理において自律神経応答の生起に関与していることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究期間の初年度であるので、サルに対する実験課題の訓練を完成させ、データを取れるようになった。その上で、課題や刺激からサルが受ける情報について知るため、行動データの1つの指標として視線位置の解析を行うとともに、自律神経応答の1つである瞳孔径の変化を調べた。その結果として、サルは研究者が意図するような社会的情報を受け取っていることを確認できた。 さらに扁桃体より単一ニューロン応答の記録も行い、上記のように得られた自律神経応答との相関まで見出すことに成功した。 以上のことを踏まえると、当初の計画を実行する上で、「おおむね順調に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、扁桃体より単一ニューロン応答の記録を本格的に進める。外側核だけでなく、基底核や中心核など他の扁桃体核群より記録し、報酬情報や社会的情報の処理において、扁桃体内に核間の機能差があるかを検討する。 さらに、扁桃体内で報酬情報と社会的情報がどのように統合されていくのか、あるいは統合されないのかという疑問の検証のため、1つ1つのニューロンが、2つの情報をそれぞれ一方のみ処理するのかあるいは両方の情報処理に関わるのか、について検討する。 また、これまではサル1頭のみでデータ記録を行ってきたので、データの再現性を高めるために、もう1頭のサルを用いて記録を開始する。
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Causes of Carryover |
本年度の購入予定であった眼球モニタ用カメラに関し、手元にあったカメラにて代替することが可能であると判明したので、カメラの購入を見送った。さらに神経応答記録用電極について、今年度中の使用量では追加購入の必要がなかったため、この購入も見送った。よって本年度の予算に残額が生じた。 次年度以降には、解析ソフトの新規購入や電極の購入、さらにはデータ入出力ボードの購入などを計画している。
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Research Products
(2 results)