2021 Fiscal Year Research-status Report
Arithmetic study of regulators using special functions
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19K03391
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
朝倉 政典 北海道大学, 理学研究院, 教授 (60322286)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レギュレーター / 周期積分 / p進コホモロジー / p進超幾何関数 / モチーフ |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、p進レギュレーターとp進周期を特殊関数を用いて研究を行い、一定の成果をあげた。より具体的には、超幾何モチーフというコホモロジーに付加構造を与えた対象を独自に導入し、そのp進周期とp進レギュレーターについての一般的な結果を証明した。 (1) 超幾何モチーフ RobertsとRodriguez-Villegasが2021年のプレプリントで超幾何モチーフを導入した。それは、Beukers, Cohen, Mellitによる代数多様体(=BCM多様体)のコホモロジーのある部分商として与えられており、文字通り、周期などといった重要な幾何的不変量が超幾何関数ないしその有限体類似によって表示されるという特徴をもつ。これはおそらく最も一般的な対象をカバーしていると思われるが、しかし一方で、ルジャンドル型楕円曲線やDworkのK3曲面などといった、慣れ親しんだ対象が彼らのいう超幾何モチーフかどうかわからない(または証明が困難)という短所がある。そこで、代表者は、コホモロジー群ではなくコホモロジーの族を対象として、超幾何モチーフを独自に定義た。代表者の定義の特徴は、BCM多様体といった特殊な多様体を用いない内在的な定義となっていることである。これにより、例えばルジャンドル型楕円曲線が超幾何モチーフになっていることが容易にわかる、といった特徴がある。 (2) 超幾何モチーフのp進周期とp進レギュレーターの研究 上記で代表者が導入した超幾何モチーフに関して、2つの研究成果を得た。まず、定義体が有限体のときのフロベニウス固有値をp進超幾何関数によって記述した。応用として、DworkのK3曲面のフロベニウス固有多項式のより精密な公式を得ている。2つ目に、超幾何モチーフの拡大データを考察し、それを記述する一般的な結果を得た。これは昨年度の高次Rossシンボルの研究の一般化とみなせる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
超幾何モチーフという新しい方向で研究を進める一方で、昨年度の成果を論文にまとめ、投稿を行った。宮谷和尭氏(東京電機大学)との共著論文を投稿したところ、論文の間違いを指摘された。この論文の結果は、当該研究課題において、一連の研究プロジェクトの基礎となっており、この論文の主結果が崩れると他の予定していた研究計画に大きく影響する。そのため、論文の間違いを直すことを余儀なくされた。この修正には、数か月間を要したが、幸いにも、ほぼ元の形に近い状態で主結果を回復することができた。修正した論文は、アーカイブへ掲載した後、再投稿を予定している。 上記のように、宮谷氏との共著論文において、当初予期しなかったことが起こったが、それ以外の研究プランの進捗状況は、おおむね順調であった。超幾何モチーフのp進周期とp進レギュレーターの研究について、研究実績の概要で報告したように、いくつかの満足のいく成果を得ることができた。 当該年度の成果は、すでに論文として完成し投稿中の内容もあるが、一方で、宮谷氏との共著論文の修正に数か月間を費やしたことが原因で、いまだ書きあがっていない研究結果(論文準備中)もある。また、当初の予定では、研究成果はアーカイブ等を通して広く発信するだけでなく、研究集会での口頭発表も積極的に行うはずだった。しかしながら、新型コロナウイルスの影響が長引いており、当該年度においても、口頭発表は、対面セミナーによる一回のみで、十分だったとは言い難い。また、当該年度に大坪紀之氏(千葉大学)らと共に実施する予定だった研究集会「Regulators in Niseko」も、延期を余儀なくされた(この研究集会は22年度に開催を予定している)。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究の推進方策であるが、まず宮谷和尭氏(東京電機大学)との共著論文を出版することを目指す。論文に間違いが見つかり、修正を余儀なくされたが、今ではその作業は終了し、論文としては完成している。入念に推敲を行った上で、しかるべき専門誌に投稿する予定である。この論文は、他の研究プロジェクトの基礎になっている論文であるから、結果の正しさの裏付けを得るという意味においても出版を目指すことに意義があると考えている。 昨年度に得た超幾何モチーフのいくつかの研究成果について、一部の内容は論文として書き上げた。すでに、投稿中のものもあるが、一方で、論文としてまとめることが保留になったままの研究結果もある。証明そのものはすでに完成しているので、今年度は、それらを論文として完成させる予定である。もし可能であれば、それも投稿および出版をめざす。 2021年度の研究成果である超幾何モチーフは、まだまだ研究発展、一般化の余地が残っている。GKZ超幾何関数など多変数化に伴う一般化は興味深い一般化である。ただし、研究代表者は、これまで多変数の超幾何関数にそれほどなじんでいなかったため、素養が十分とは言えない。従って、知識の修得に一定の期間を費やすことが必要であると考える。それらをを踏まえて、複素幾何、p進的数論幾何の両側面から研究を推進する。 2021年度に開催予定だった研究集会「Regulators in Niseko」は、新型コロナウイルスの影響により、延期を余儀なくされた。当該年度の9月に、延期した研究集会を開催する予定である。この研究集会を通して、レギュレーターやL関数の研究の交流が促され、アイデアの鼓舞や研究の活性化を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、当該年度に予定していた研究集会「Resulators in Niseko」の次年度への延期を余儀なくされた。この研究集会は、参加者全員が北海道ニセコ町のホテルに滞在して実施する合宿型研究集会である。最新の研究成果を講演者に発表してもらい、また、昼夜を問わず研究者どうしで議論および研究交流をもつことを見込んでおり、研究の活性化を目指している。この研究集会の開催のために、会場費や学生への旅費支援など50~60万程度の支出を見込んでいる。 ニセコでの研究集会開催のための支出以外に、代数シンポジウム(日本数学会開催)の参加および講演発表を予定している。今のところ、令和4年度の代数シンポジウムは対面型で実施する予定であるため、旅費支出を予定している。また、それ以外の研究集会も対面による開催の場合は、旅費として使用する。 大学における様々な業務のオンライン化が進んでいる。遅延なくそれら業務を遂行するには、大学における計算機の整備も重要であるが、自宅でも使用できるノート型パソコンも必要である。現在、ノート型パソコンは1台しかなく、突然の故障といった不測の事態に備えられていない。次年度にもう一台ノート型パソコンの購入を予定している。
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Research Products
(4 results)