2021 Fiscal Year Research-status Report
p進ラングランズ対応を用いた一般化岩澤主予想の解決へ向けて
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19K03404
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
中村 健太郎 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (90595993)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 岩澤主予想 / ゼータ元 / p進L関数 / 局所イプシロン予想 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼータ元の普遍変形への拡張に関して昨年度までに得られた結果を用いて、Coleman-Mazur固有曲線上のゼータ元を構成し、これを用いた固有曲線上の岩澤主予想の研究を開始した(KIASのChan-Ho Kim氏との共同研究)。その第一歩として、固有曲線上のガロア表現の族(より正確には(φ, Γ)加群の族)に対して$p$進$L$関数の構成の一般論(Perrin-Riou理論)を構築した。特に、近年Coleman予想(Spectral Halo予想)などと関連して活発に研究されているAdic固有曲線上にゼータ元を構成し、さらにこの曲線上のPerrin-Riou理論を構築することでAdic固有曲線上の$p$進$L$関数を構成することができた。Tateの意味での固有曲線上ではなく、Adic固有曲線上のゼータ元や$p$進$L$関数の構成は従来知られていなかった新しい結果である。また、我々の構築したPerrin-Riou理論では、$p$進$L$関数の構成問題において例外的な場合である例外零点の場合やcritical slopeの場合も扱うことが可能である。これについては先行結果はあるが、我々は、局所イプシロン予想に関して以前得ていた結果から、より簡明な方法で導くことができるようになったと認識している。今後は、これに続く研究として、このゼータ元と$p$進$L$関数を用いてAdic固有曲線上の岩澤主予想を定式化し、この予想に関する研究を行っていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固有曲線上のゼータ元の構成及び$p$進$L$関数の構成については, 基礎となるPerrin-Riou理論も込みで, 現状において(おそらく)最も一般的な形で完成することができた。一方、この問題に集中したことで、当初予定していた、ゼータ元の法$p$非消滅性の問題、局所イプシロン予想のEmerton-Gee スタック上への拡張の研究は進展させることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度得られたゼータ元の岩澤主予想への応用(および先行結果であるGreenberg-Vatsal, Emerton-Pollack-Westonの結果)では, 考えている法pガロア表現が絶対 既約かつ, (それぞれの設定における)ある種のミュー不変量が0であるという仮定が必要となる。詳しくいうと、我々においてはゼータ元が法pで消えないとい う仮定が必要であり, 先行結果ではp進L関数が法pで消えないという仮定が必要であり, pで通常という状況の下では後者の仮定から前者の仮定が導かれることが わかっている。よって、我々の仮定は先行結果の仮定よりも弱いが、今後はこの前者の仮定、ゼータ元の法pにおける非消滅性を示す研究を行なっていく。これ に関して二つのアプローチを想定しており、一つは普遍変形の中のCM形式の場合(特に楕円単数の法p非消滅)に帰着する方法、もう一つは、Colmez-Shanwenに よる加藤のゼータ元の完備コホモロジーとモジュラーシンボルを用いた具体的な表示を用いる方法である。 次に、局所イプシロン予想の研究では、近年のガロア表現の変形理論の代数化(Emerton-Gee理論)の進展に合わせて、局所イプシロン予想をEmerton-Geeに より構成された(φ,Γ)加群のモジュライスタック上に拡張する研究を行う。我々がこれまでに得た局所イプシロン予想では一般の結果を得るためにはクリスタ リン表現の稠密性が必要であり、この結果は剰余表現が可約な場合には適応できなかった。Emerton-Geeの(φ,Γ)加群のモジュライスタックでは剰余表現を動か すことができるため、このアプローチによって従来の困難を克服できるようになると期待している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため予定していた出張(特に海外出張)ができかったため、予定した予算を使用できなかった。 翌年度には国内出張及び書籍PCなどに物品費として使用する予定である。
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