2019 Fiscal Year Research-status Report
Siegel modular forms and algebraic modular forms
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19K03424
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊吹山 知義 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (60011722)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジーゲル保型形式 / 微分作用素 / アーベル多様体 / 四元数的エルミート形式 / L 関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な研究実績は3種類ある。 (1)特殊なジーゲル保型形式をある領域に制限したものを記述する pullback formula について、2次ジーゲル保型形式の合同についての Harder 予想を解決するという桂田英典氏の研究を動機として、$p+q$ 次のジーゲル保型形式から $p$ 次と $q$ 次のある種のベクトル値のジーゲル保型形式への保型的微分作用素を極めて具体的に記述した。これを用いて、予想の解決に必要なアイゼンシュタイン級数の pullback formula を完全に具体的に記述した。更に筆者による Harder 予想の半整数ウェイト版を解決するために、一般次数のヤコービアイゼンシュタイン級数に関する明示的な pullback formula を与えた。その応用を12月 Oberwolfach 国際研究集会で発表した。またトリエステの研究所 ICTP における Don Zagier との共同研究で上述の保型的微分作用素などを決める微分方程式系を一般的に決める holonomic 系の具体的な候補を求めた。 (2)符号付きシンプレクティック型代数的保型形式の次元公式の一部を求めた。 (3)主偏極超特異アーベル多様体のモジュライについての研究で、現状整理の意味もあって、9月30日から10月4日まで名古屋にて超特異アーベル多様体の国際研究集会を主催した。ここで Hoften が私の paramodular 形式と代数的保型形式の対応予想を解決する結果を発表したのは大きな進展である。3月には台北 Academia Sinica において Chia-Fu Yu の類数が 1 の p-divisible group の族を決定する研究に関連して、ある格子の自己同型を具体的に決定した。また次数3の主偏極超特異アーベル多様体の軌跡の成分の交差の様子を算術的に記述した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
桂田英典等と Harder 予想についての共著論文を書く予定であり、ここで筆者の得た具体的な微分作用素とその pullback formula への応用の詳細を述べる予定であり、これはこの方法で Harder 予想を解決しようとする限りは、かなり決定的な結果であると思う。Don Zagier とはかねてから Higher Spherical Polynomials and Functions という共著の本を執筆中であり、これも80パーセント程度は完了している。さらに、Chia-Fu Yu 等と類数 1 の p-divisible group の族に関する共同研究をしており、すでにいくつかの貢献をしたが、これも共著論文を書き始めている。また「超特異主偏極アーベル多様体の軌跡の成分の交わりの様子が、低次元の部分多様体にまでわたって、4元数的エルミート群のアデール的ダブルコセットやヘッケ環などの条件で記述できるであろう」という、筆者のかなり以前からの予想が、Chia-Fu Yu との討論等を通じて、次元が3までについては、確認できる段階に来ており、これについても論文執筆を予定している。今年度に得た筆者の代数的保型形式の次元公式についての新しい結果はすべて Cris Poor たちのパラモジュラー形式に関する具体的な結果と完全に符合しており、この点でも将来は明るい。また日本語で「代数的保型形式と幾何学」についての本を執筆中である。いずれについても、このままの方針で研究を続行する手段がはっきりしており、また現実に研究成果があがっているので、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
筆者が長年研究している保型的微分作用素の理論は、もっと具体的な記述が出来る場合があると考えている。応用を見込んで、これを進化させたい。筆者はヤコービアイゼンシュタイン級数の pullback formula に関連して、2次のジーゲル保型形式のスピノール L 関数の臨界値の代数性を証明しており、この結果は臨界値を具体的に計算できる手段を与えている。これを実際の保型形式に応用して具体的な値を求めたい。また高次元主偏極超特異アーベル多様体の軌跡について Chia-Fu Yu(Academia Sinca) と、保型的微分作用素に関する高次特殊関数について Don Zagier(ICTP) と共同研究を行う。これらと関連するがやや新しい話題として、筆者が以前に保型的微分作用素によって具体的に構成した半整数ウェイトの池田・宮脇リフトの非消滅について林田秀一(上越教育大)、またすでに得られている低いレベルのジーゲル保型形式の構造定理を元にした、同じレベルでの指数1の2次ヤコービ形式の構造定理について青木宏樹(東京理科大)と共同研究を予定している。本年5月に予定されていたアメリカ数学研究所での Cris Poor たちとの共同研究では、素数レベルの符号付きのパラモジュラー形式の次元公式や未知のヒルベルト保型形式の次元公式を求める研究を想定していたが、コロナビールスの影響で中止になり、また、その他の世界の研究者との交流もいろいろ差し支えが生じている。よって研究協力者の様子をみながら、研究内容の優先順位を柔軟に組み替えていくつもりである。また実際の研究では直接訪問による研究討論がベストではあるが、当面これは望めないので、相手方の事情が許せば、世界の感染状況をみながら、直接訪問にかわって、電子メール、スカイプ等の手段で情報交換を行いたい。
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Causes of Carryover |
国内では研究者相互の日程があわず、国内相互訪問による共同研究の時間がとれなかったこと、また国外の研究集会や共同研究の参加については、中国訪問はコロナビールスのため好ましくないと考え、招待を受けなかったこと、および他の機関の場合はその大部分の旅費が外国の研究機関から支払われこと、等の事情で旅費に余剰が生じたため。今年度は国内相互訪問による討論を予定しているが、コロナビールスの状況によるため、これが不可能な場合は、研究の優先順位の組み替えを行い、数式処理用の計算機機材やソフトの拡充、または遠隔コンタクトのための機材等のために使用すること等も考えている。
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Research Products
(16 results)