2021 Fiscal Year Research-status Report
Siegel modular forms and algebraic modular forms
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19K03424
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊吹山 知義 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (60011722)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジーゲル保型形式 / 超特異アーベル多様体 / 4元数的エルミート形式 / 微分作用素 / 特殊関数論 / ラングランズ予想 / 類数公式 / ゼータ関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
異なる代数群の保型形式の間のゼータ関数を保つ対応は、一般的にラングランズ予想として知られているが、具体的な個々の場合に正確に予想を述べるのは容易ではない。 代表者は40年以上前から、次数2のパラモジュラー形式と主種でない4元数的エルミート形式に関する保型形式の間のゼータ関数を保つ対応についての極めて精密な予想を提示してきたが、これは近年、最初に van Hoften により証明され、次に Weissauer と Roesner により、別証明も与えられ、さらにこれを用いて昨年 Dummigan その他が、Atkin-Lehner 対合と呼ばれる位数 2 の写像による分解成分それぞれに対しても同型対応が存在することを証明した。代表者はその分解成分それぞれについて、4元数的エルミート形式の方の次元公式をその類数公式に基づいて計算し、その結果、重さが3以上の素数レベルのパラモジュラー形式の分解成分の次元を求めることに成功した(投稿準備中)。これらについては Poor. Yuen 等が昔から膨大な実験的な計算を行っており、結果的に彼らの次元計算をウェイトが3以上について確認するという結果にもなっている。また以上の話は超特異アーベル多様体の算術に深い関係があるが、これについての40年にわたる発展の解説をマルセイユの国際会議にて遠隔で基調講演としておこない、またこの内容は論文としてアクセプトされている。ゼータ関数の特殊値を法とする、ジーゲル保型形式と楕円保型形式の合同に関する Harder 予想について、桂田英典等と共著論文を書き、これは投稿中である。これに不可欠だったジーゲル保型形式上の微分作用素と特殊関数論の究極的一般論を出版した、跡公式に登場する実形式的ジョルダン代数上のポアソン公式のある一般公式を出版した。超特異アーベル多様体の算術と類数の研究、種の理論の整備等も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最近、代表者のパラモジュラー形式に関する極めて古い予想が多くの国際的研究者に興味を持たれ、さまざまな結果が証明されてきたのは、大変に喜ばしく思う。時代が進化して、いろいろな数学的な道具がそろってきたと言うことかと思う。当初、大きな目標と考えていた、代数的保型形式とジーゲル保型形式の対応は、パラモジュラー形式については、ほぼ完了したといえる。実際、符号付きの素数レベルのパラモジュラー形式の次元まで求めるのはなかなか難しいと考えていたにもかかわらず成功したので、その点では当初の予定以上に進展している。この計算には素数レベルの特殊事情を用いているところがあり、一般レベルで次元の計算を実行するには、跡公式による正攻法での研究が必要であるが、素数レベルの結果はこのような研究の基礎となるものである。一方で、岩堀部分群や中間次元のパラホリック群については、まだわからないところも多いので、まだまだこの主題が終わったとまではいえない。また関連する超特異アーベル多様体について、パラホリック群とそのヘッケ作用素を用いた幾何学的現象の算術的な記述の研究は、まだ始まったばかりである。これ以外に Humbert surface とヒルベルト保型形式をもちいたパラモジュラー形式の構成問題もまだまだいろいろなすべきことが多い。あらたな次元公式を得たことで、これらについての新しい進展が期待できるものと考えている。今回の次元公式は次数2のジーゲル保型形式に対する、自明でないヘッケ作用素の跡公式の初めての具体的な公式と見なせる。2次ジーゲル保型形式のヘッケ作用素の具体的な跡公式というのは今回の研究計画の範囲外の主題ともいえるが、これは代表者の長年の夢もあり、大変心強い進展となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では外国人研究者との直接の研究討論が欠かせないのであるが、相互訪問等はコロナ次第であるので、計画が立てにくい。たとえば台湾の Chia-Fu Yu やオランダの Karemaker たちとの超特異アーベル多様体の算術についての討論を行っているが、ネットではどうも微妙な点の議論について効率が悪い。できればどこかで会いたいのだが、やむを得なければメール連絡で議論を続けることになると思う。6月半ばにアメリカ数学研究所でのネットワークによる、ごく少人数の共同研究を1週間予定しており、そこではパラモジュラー形式、極大でない整数環に対するヒルベルト保型形式、等を議論する予定である。その目的で2元2次形式の種の理論の簡便なまとめをすでに行っていて、本の一部として出版する予定である。その他、Boecherer, Dummigan, Salvati Manni, Williams, Zagier 等の外国人研究者と微分作用素、跡公式、Harder 予想、保型形式環等について議論したい。国内では桂田英典等と保型形式の合同に関する Harder 予想、および関連する微分作用素の理論の応用について議論するために、将来は相互訪問等を考えている。これはパラモジュラー形式とその半整数ウェイト形式などと関連がある。また林田秀一と保型形式のリフト、青木宏樹とレベル付きのヤコービ形式について共同研究をする約束になっているが、未だに実現していないので、なんとか開始したい。また2次ジーゲル保型形式の一般のヘッケ作用素の具体的な跡公式についての研究を再開できればと思う。これ以外に、一般の管状領域上の保型性を保つ微分作用素の生成級数についても、はっきりした予想を持っている。以上はいずれも中間的な結果があるものも多く、先に進むために、今の時点で論文発表した方がよいものもあり、結果発表にも力を注ぎたい。
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Causes of Carryover |
コロナ蔓延の状況で、予定していた国内外の学会等への出席が難しく、特に外国への入国および日本への再入国の規制を詳しく検討した結果、検査等の実行可能性に大きな不安があり、短期の海外出張は到底現実的ではないとの結論に達して実行できなかった。このため旅費に大幅なあまりが生じた。次年度でも、やはり国際学会等への出席は当面は難しいと考えるし、実際、次年度6月の対面での共同研究予定がネット会議に変更になったりしているが、それでも、ネット会議で招待講演等を行った経験によれば、時差の関係でどうしても対応に限界が生じたので、年度の後半に状況が好転すれば、共同研究のために欧州等に出張することを考えている。研究打ち合わせの国内出張もやがて可能になると見込んでおり、外国旅費と国内旅費をコロナ収束や出入国規制の状況を見ながら適当に案配しながら旅費を使用していきたい。なおネットワークによる国際共同研究および会議のために、いろいろ周辺機器等の費用を必要とする。また計算用のソフトの更新、論文のオープンアクセスなどの費用、専門書の購入費用など、必要に応じて使用したい。
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Research Products
(7 results)