2020 Fiscal Year Research-status Report
Mordell-Weil Groups of elliptically-fibered Calabi-Yau manifolds
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19K03427
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
鍬田 政人 中央大学, 経済学部, 教授 (00343640)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 楕円ファイブレーション / Mordell-Weil群 / Calabi-Yau多様体 / K3曲面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主目標は,楕円Calabi-Yau多様体,すなわち楕円曲線をファイバーとするファイバー空間の構造をもつCalabi-Yau多様体で3次元以上であるものについて,そのMordell-Weil群およびWeil-Chatelet群をK3楕円曲面の場合と対比させて理解することである.令和2年度は,このようなファイバー空間の構造を持つ3次元多様体のうちCalabi-Yau多様体ではなく有理多様体の場合について,そのModell-Weil群に格子の構造を付与する問題に取り組んだ.これはより難解なCalabi-Yau多様体の場合の試金石となると考えられるからである.有理多様体の場合でも底空間がDel Pezzo曲面である場合などは種々の応用が見込まれるが,この場合底空間のPicard群が比較的簡単に記述でき,楕円曲面のMordell-Weil格子の理論が無理なく拡張できる.このような3次元有理多様体のうち他の分野に応用が期待されるいくつかの具体例について詳細に調べた.また,楕円曲線によるファイバー空間のWeil-Chatelet群については,超弦理論の中のF理論において離散的ゲージ対称性としての物理的な意味が見いだされており,物理的観点からも研究がなされている.そこで,3次元Calabi-Yau多様体のWeil-Chatelet群の研究の前段階として,Halphen曲面と呼ばれる,射影平面上の一般の位置にある9点でblowupして得られる曲面について研究した.この上に存在する楕円曲面の構造は二重ファイバーをもち,大域切断が存在せず,Weil-Chatelet群が非自明となる.かつて楕円曲線の数論の観点から考察した一般化Kummer曲面が実はこのHalphen曲面の二重被覆であることが見いだされたので,以前の結果を理論物理の観点から見直してみた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は,新型コロナウイルス感染症の影響で移動が制限され,研究集会なども予定通り開催されず,研究遂行の方針の変更を余儀なくされた.楕円曲線によるファイバー空間をもつ3次元多様体のModell-Weil群に格子の構造を与えることが出来るかという問題については,3次元楕円Calabi-Yau多様体の場合に取りかかる前段階の3次元有理多様体の場合で足踏みをせざるを得なかった.一方,初年度にはあまり手が付けられなかったWeil-Chatelet群の研究にについては,Halphen曲面上の大域切断をもたない楕円曲面の構造の研究により,次年度以降さらに進んだ研究を行う端緒をつかんだ.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度も新型コロナウイルス感染症の影響で引き続き移動が制限され,研究集会も延期・中止となったり開催方法が変更されるなどして,研究遂行の方針の変更を余儀なくされると思われる.一方,各種の定例研究セミナーがオンラインで開催されており,従来では参加することが難しかった研究セミナーに遠隔からでも参加可能となっている.そこで、このようなセミナーを積極的に利用し,これまで直接話を聞くことが難しかった研究者の発表を聞いたりして本研究にかかわる多くの知見を得たいと考えている.具体的には,楕円曲線によるファイバー空間の構造をもつ3次元多様体のMordell-Weil群に格子の構造を付与できるかという問題について,Calabi-Yau多様体のうち底空間が有理曲面の場合について新たな結果を得ることを主目標とする.また,Weil-Chatelet群の研究については,曲面の場合の結果を踏まえて3次元多様体の場合にその結果を拡張することを試みる.
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Causes of Carryover |
(理由) 新型コロナウイルス感染症の影響による研究集会の中止・延期等により,当初予定していた旅費をほとんど出費することがなかった.また予定していた研究打合せ等の旅費の出費も少なくなった. (使用計画) 令和3年度も引き続き移動の制限に伴う研究集会の中止・延期が見込まれ,旅費の出費が少なくなると予想される.その分,種々の具体例の計算に注力したいので,そのための大規模な数式処理を行うコンピュータと最新の数式処理プログラムを必要に応じて導入する.
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