2022 Fiscal Year Research-status Report
Mordell-Weil Groups of elliptically-fibered Calabi-Yau manifolds
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19K03427
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
鍬田 政人 中央大学, 経済学部, 教授 (00343640)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 楕円ファイブレーション / Mordell-Weil群 / 楕円曲面 / K3曲面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標の1つは,楕円曲面のMordell-Weil格子の理論を高次元楕円多様体,すなわち一般ファイバーが楕円曲線であるファイバー空間の構造をもつ高次元多様体に拡張することである.令和4年度は前年度に引き続き,その試金石となる,有理多様体である3次元楕円多様体について,そのModell-Weil群に格子の構造を定義し,それを決定する問題に取り組んだ.3次元以上の楕円ファイバー空間では,射影空間P^n上のWeierstrass方程式で定義された場合でも,その相対極小モデルを得る際に底空間もブローアップする必要があり,まず底空間のPicard群の理解が必要である.従来研究していた,レベル3構造を持つアーベル多様体のモジュライ空間である3次元楕円多様体では,その相対極小モデルの底空間は射影平面を一般の位置にある9点でブローアップして得られるHalphen曲面であり,階数6のMordell-Weil群を持つ.その群にE6型のルート格子と同型な格子の構造を付与できることは前年度すでに示したが,この楕円ファイバー空間の底空間を直線に制限して得られる有理楕円曲面のMordell-Weil格子はE8型のルート格子と同型であり,もとのE6型の格子をその部分格子として含む.これら2つの格子の間には位数3の巡回群が作用しており、その関係は群論的にも数論的にも興味あるものだが,本年度はこの関係を詳細に明らかにし,シンプレクティック群Sp(4,3)との関係も詳しく調べた. 本研究では理論物理学との関連から3次元以上の多様体を主な対象としたが,2次元のCalabi-Yau多様体であるK3曲面の研究は近年発達が著しく,その研究成果は理論物理にとっても重要な意味を持つ.そこで,本年度は従来行ってきた楕円K3曲面のMordell-Weil群の応用にも力を入れ,楕円曲線の数論への応用を持つ結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度もまだ新型コロナウイルス感染症の影響で移動が制限され,研究集会なども予定通り開催されず,研究遂行の方針の変更を余儀なくされた.楕円曲線を一般ファイバーとする3次元ファイバー空間のModell-Weil群に格子の構造を与えることが出来るかという問題については,底空間が射影平面と双有理同値の場合には意義ある一般的な結果が得られる目途が立ちつつあるが,本研究のもう一つの柱であるWeil-Chatelet群の研究についての進捗状況はやや遅れていると言わざるを得ない.ただ,これについてもHalphen曲面上の大域切断をもたない楕円曲面の構造の研究により,次年度以降さらに進んだ研究を行う端緒をつかんでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は,新型コロナウイルス感染症の影響による移動制限がほぼなくなり,国際研究集会などは従来通りに近く開催される予定になっている.そこで,今年度はこのような国際研究集会にもできる限り参加し,これまで4年間に得られた結果を積極的に発表し,他の研究者との討論を通じて本研究をさらに深めていきたい.また,これまで直接話を聞くことが難しかった研究者の発表を聞いたりして本研究にかかわる多くの知見を得たいとも考えている. 本研究では理論物理学との関連を視野に入れて,扱う主な対象を3次元以上としたが,2次元のCalabi-Yau多様体であるK3曲面の研究は近年発達が著しく,その研究成果は理論物理にとっても重要な意味を持つという.そこで,本研究と関わりの深いK3楕円曲面のMordell-Weil格子の理論とその応用にも視野を広げて研究を進めたい.
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Causes of Carryover |
(理由) 新型コロナウイルス感染症の影響で,年度内に予定していた研究打合せ等の旅費の出費が少なくなった. (使用計画) 令和5年度は,移動の制限の緩和にともない,研究集会が従来通り行われることが見込まれ,旅費の出費が増えることが見込まれる.また,具体例のデータの蓄積に注力したいので,そのための大規模な数式処理を行うコンピュータと最新の数式処理プログラムを必要に応じて導入することを検討している.
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Research Products
(1 results)