Project/Area Number |
19K03439
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金子 元 筑波大学, 数理物質系, 助教 (10706724)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 一様分布論 / 小数部分 / 正規数 / Pisot数 / 等比数列 / 多次元数系 |
Outline of Annual Research Achievements |
一様分布論では, 等比数列の小数部分の極限点の研究が古くからの研究課題であった. 今年度は, 特に最大極限点に関する共同研究を行った. その結果, 公比がPisot数と呼ばれる数の場合, 小数部分の最大極限点全体の集合が幾何学的に著しい特徴を持つことを示した. 本研究に関する成果を, Numerationと呼ばれる国際的なオンラインセミナーにおいて報告した. また, 本業績に関する論文が認められ, 雑誌Advances in Mathematics(査読付雑誌)に受理され, web上で公開された. また, 本年度は多次元の数系に関するdigitの研究を遂行した. 本研究で扱った数系は, ベータ展開と呼ばれる数系の拡張である. 具体的には, Rotational beta展開やzeta展開であり, これらは2次元の数系の具体例である. 2次元数系のdigitに関してdigitの漸近挙動の解析を行った. 2次元の数系に関して, digitが一様に現れるかどうかに関する先行研究はあまりなかった. 本研究により, 2次元数系において代数的数を展開したときのdigitの複雑性を解析することに成功した. Digitの複雑性の研究は, digitの一様性に関する研究の部分的な成果といえる. 本研究の成果を, 現在論文にまとめ, 投稿予定である. さらに, 本年度整数の2進展開におけるsum of digitに関する不定方程式を研究した. この不定方程式は, 平方数のsum of digitを研究するために必要である. 上記の不定方程式に関して, 解の有限性に関する定理を証明した. 日本数学会において本成果を発表した. なお, 本成果をまとめたものを論文として投稿予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Lagrange spectrumと呼ばれる古典的な研究対象がある. この研究対象は一見すると等比数列の小数部分とは何の関係もないように見えるが, 本研究により, 等比数列の小数部分に関する最大極限点全体の集合とLagrange spectrumの間に共通点を見いだすことに成功した. この発見により, 等比数列の小数部分に関する一様分布論と記号力学系という異なる2分野を, 新しい観点から結びつけることに成功した. 結果として, 一様分布論に記号力学系の手法を用いることで, 等比数列の小数部分に関する漸近挙動の解析を大幅に進展できることが期待される. また, 上記の研究は, 等比数列の小数部分に関する公式を基に行っている. 本年度, その公式に関する改良点が, 共同研究により発見された. これにより, 過去には扱えなかったような数列の小数部分に関する漸近挙動の解析もできるようになると期待される. また, 本年度は2次元数系に関して, digitの一様性に関する共同研究を行った. 昨年度までは, 2次元数系に関しては, 強い条件を仮定したものしか扱うことができなかった. 本年度の研究成果により, 昨年度の成果と比較して扱える数系の種類が大幅に増えた. これにより, さらなる多次元数系のdigitに関する研究をする際の基本的な手法を確立したといえる. さらに, 2進数のsum of digitに関する研究を行った. 平方数のsum of digitに関する研究を行うために, ある不定方程式を研究する必要がある. その不定方程式に関して, 昨年度までは解の有限性に関して全く知られていなかった. 本年度は解の有限性を証明することに成功したので, 研究が大幅に進展した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度等比数列の小数部分に関する公式を改良することができたので, 今後はさらに一般に線形回帰数列の小数部分に関して研究を行う. 小数部分に関する公式の改良にともない, 小数部分の解析を行うために, 力学系に関する最新の情報が必要となった. 例えば, ラグランジュスペクトラムのハウスドルフ次元を解析する手法など, 力学系の研究者とオンラインで連携を取り, 研究を遂行する. また, 等比数列の小数部分とベータ展開の関連が知られている. 本研究では, 等比数列の小数部分とshift radix systemなどとの関連について調べ, 数列の小数部分の漸近挙動の解析に応用する. また, 本年度は2次元の数系(ベータ展開の一般化)に関するdigitの解析に成功した. 今後はさらに多次元の数系におけるdigitの解析, 特に複雑性の研究を行う. また, 多次元連分数に関するdigitの研究を行うため, 数系の専門家とオンラインで連携を取り, 研究を行う予定である. さらに, 現在フランスの研究者と, 整数の2進展開に関して共同研究を行っている. 本年度, 2進展開のsum of digitに関連のある不定方程式の解の有限性に関する成果を得た. この解の有限性は, sum of digitに対する不等式を与える. 平方数のsum of digitの挙動に関しては「Melfiの予想」と呼ばれる未解決問題をはじめ, 知られていないことが多い. 本年度得られた不等式を応用することにより, 平方数, 立方数など特殊な整数のsum of digitに関する挙動を解析する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で国際渡航ができず, また, 国内の出張もできなかった. このため, 旅費を使用することができず, 請求金額と使用金額の間に差が生じた. 翌年度は, 国際渡航ができない代わりに, オンラインによる方法で数学者と研究連携を深め, 研究を遂行する予定である. 具体的には, オンラインで議論をするために, カメラなどの電子機器に予算を使用する. また, 本年度の研究により, 研究を遂行するためには様々な分野の最新の情報を収集する必要があると判明した. 例えば, 2進展開のdigitの複雑性を研究するためには, フランスの数論に関する専門家と研究打ち合わせをする必要がある. また, 等比数列の小数部分に関する研究を遂行するためには, 韓国のエルゴード理論の専門家と連携をとる必要がある. さらに, 国内外の様々な研究者に最新の情報に関する講演をしてもらう予定である. そのために, 謝金という形で予算を使用する予定である. また, 書籍などを購入することにより, 様々な分野の最新の情報を収集する.
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