2019 Fiscal Year Research-status Report
Application of cluster algebras to punctured Riemann surfaces and combinatorial representation theory
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19K03440
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山崎 玲 (井上玲) 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (30431901)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クラスター代数 / 点付きリーマン面 / 量子群 / 表現論 / 可積分系 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、有限次元単純Lie環gと正整数mに対して無限箙Q(g)とm周期的な箙Q(g,m)を定義し、それぞれの箙に付随するクラスター代数的構造の量子群の表現への応用を考察して次の結果を得た。
(1) 周期的箙Q(g,m)を保つクラスター変異の列で、クラスターX、A変数の生成する有理関数体上に作用するワイル群を成すものを構成した。gがA、D、E型の場合には、Q(g,m)とワイル群は昨年度に石橋氏、大矢氏と行った共同研究で構成したものと一致している。(2) 無限箙Q(g)のX変数は、Edward-Frenkelが90年代に提唱したq指標の構成要素となっているある変数と同じポアソン構造をもつことを示した。また、Q(g,m)に対して(1)で構成したワイル群作用が、qが1の冪根のときのq指標上のワイル群作用に拡張できることを示した。さらにq指標がこのワイル群作用で不変であることを証明した。(3) Edward-Frenkelが提唱したq指標と戸田場の理論との関係、2000年に樋上氏との共同研究で導入したq指標と離散戸田格子との関係と(2)の結果をつなぎ合わせることにより、離散戸田格子方程式のタウ関数がクラスターA変数そのものであることを明らかにした。
6月に京都大学数理解析研究所で開催された研究集会 Cluster Algebras 2019 に参加し、招待講演を行うとともに今年度の成果につながるような情報収集と議論を行った。また6月にイギリスで開催された研究集会 Integrable systems, special functions and combinatorics、2月にオーストラリアで開催された研究集会 Baxter 2020: Frontiers in Integrability に参加し、クラスター代数の幾何と表現論への応用に関する招待講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、量子群の表現論に出自をもつ「幾何R行列」をクラスター代数の文脈で書き換えた私の最近の共著論文のアイデアをもとに、幾何学および組合せ論的表現論の新しい展開を生み出すことである。昨年度に石橋氏、大矢氏と行った共同研究では、対称化可能なアフィンLie環に対してそのワイル群を実現する箙の族を構成した。この箙は点付き曲面のタイヒミュラー空間と相性が良く、ワイル群作用は幾何的意味をもつことを明らかにした。本研究課題の1年目である今年度は、表現論のほうに新しい進展があった。有限次元単純Lie環に対して異なるタイプの箙の族を構成し(ただしLie環がA、D、E型のときは一致する)類似の手法でワイル群を実現した。今回の箙は量子群の有限次元表現と相性が良く、構成したワイル群作用はq指標を不変にするという興味深い性質をもつ。今後の計画でも述べるように、さらなる進展が期待される。
以上のことから、研究は概ね順調に進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はクラスター代数の応用に関する研究を次のように進める予定である。
ワイル群の実現に関連した問題:無限箙 Q(g)は、2016年にHernandezとLeclercが量子群のq指標のクラスター代数的構造を調べたときに導入したものと本質的に同じである。そして今回構成した周期的箙 Q(g,m)を保つワイル群作用は、素朴にはqが1の冪根のときの量子群の表現に関連している。今後は、一般のqの場合つまり無限箙の場合に今回構成した作用を延長する可能性、およびq指標との関係を考察しようと考えている。
タイヒミュラー空間への応用に関連した問題:GoncharovとShenが行った代数群Gを用いた点付きリーマン面のモジュライ空間の研究の、Kac-Moody Lie群への拡張を調べる。それには昨年度に石橋氏、大矢氏と行った共同研究で構成した、Kac-Moody Lie環に付随する箙の族と、その箙へのワイル群作用が応用できると考えられる。またリーマン面が点付き円盤の場合には、Schrader-Shapiro、Ipが証明G局所系モジュライ空間の量子化に量子群が埋め込めるという興味深い結果がある。この現象の幾何的および表現論的な性質を調べ、3次元双曲多様体の不変量や可積分系への応用を研究する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で令和2年2月後半以降の出張予定が全てキャンセルになったため、旅費の未使用分が出て次年度使用額が生じた。
しばらく続く感染症の影響を考慮し、研究を遂行するための情報収集や研究打ち合わせを行うインターネット環境を整備するために使用する予定である。もし状況が好転して出張が可能になったときには旅費にも使用しようと考えている。
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Research Products
(5 results)