2021 Fiscal Year Research-status Report
A Cartan decomposition, restricted roots and invariant measure of real spherical homogeneous spaces of reductive type
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19K03453
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
笹木 集夢 東海大学, 理学部, 准教授 (60514453)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 可視的作用 / 簡約型実球等質空間 / カルタン分解 / 不変測度 / ハイゼンベルグ群 / ハイゼンベルグ型ゲルファント対 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)Ali Bakouti氏(Sfax大学)との共著論文が掲載・出版された(Journal of Lie Theory 31 (2021), 719--750).本研究成果を2021年度日本数学会年会で報告した. (2)あるハイゼンベルグ等質空間上の準正則表現をSegal--Bargmann変換(実数ベクトル空間上の熱核変換)とハイゼンベルグ群上の熱核変換を用いて正則実現できることを前年度に発見した.このアイディアを一般のハイゼンベルグ等質空間に対して適用し準正則表現の正則実現を与えた.これにより,複素ハイゼンベルグ等質空間における作用の可視性と準正則表現のある部分群への制限が無重複であることの同値性を証明した.本研究の成果は,2022年3月の日本数学会2022年度年会にて発表した. (3)ハイゼンベルグ群の等質空間に対する可視的作用の研究に引き続く形で,既約なハイゼンベルグ型ゲルファント対が可視的作用をもつことを証明した.特に,可視的作用による各軌道と交叉する部分多様体を与えた.本成果については今後さらに内容を精査した上で論文としてまとめ研究発表をする計画である. (4)階数1の簡約型実球等質空間は局所同型を除いて(複素球等質空間も含めて)5種類に分類されるが,これらについて制限ルートを特定し,不変測度を具体的に求めることができた.この場合は対称空間に対する理論が適用できないが各単純リー群(のリー環)の具体的実現により明示的に与えた. (5)階数が2以上の既約な簡約型実球等質空間に対する研究は,簡約型複素球等質空間に対する手法が実球等質空間に対しても適用することで進展している.本研究を遂行する過程で対称対に対する極大分裂可換部分空間の中心化環を特定する必要があり,それを理解するための方法を見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(a)既約な簡約型複素球等質空間に対する研究成果に関する論文執筆が遅れている.執筆中にいくつかの問題が発生しそれらの解決が必要になったことが原因である(一部は【研究実績の概要】(5)参照).一方で,問題解決により内容が明快に説明できると考えられることから,論文執筆を後回しにした.当初の計画よりもやや遅れていると判断した主な理由がこれである. (b)簡約型実球等質空間に対するカルタン分解における極大分裂可換部分空間の具体的表示方法は発見したものの,対称空間のように統一的に与える方法は不明であり,よって分類に沿って個々に調べている状況である(逆に,個々に調べることにより実球等質空間の幾何構造が見えるという利点があるため,この方法を推し進めている).特に,既約でない場合の個数が多いため,時間を要している.それに伴い,制限ルートの集合や不変測度の明示的表示の研究が遅れている. (c)前年度の【今後の研究の推進方策】で述べた既約なハイゼンベルグ型ゲルファント対に対する研究成果が得られ予定より進展している.今後論文にまとめる必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでコロナ禍で抑制あるいは制限されていた研究集会などの研究成果を発表する機会や研究討論する機会が増加することを期待し,今後実施される研究集会などで成果発表を通して精緻な研究を実施し,研究交流を行うことで発展に努める.具体的には,次の内容について遂行する計画である. (1)これまでは階数1の複素球等質空間に絞って論文にまとめていたが,階数1の実球等質空間3種類も含めて制限ルートや不変測度の研究成果を論文にまとめる.また,成果発表を行う.さらに,既約な簡約型複素球等質空間のうちケーリー型に対する研究成果を論文にまとめて投稿する. (2)【研究実績の概要】の(5)の後半で述べた極大分裂可換部分空間の中心化環に関する結果について,単独の研究課題としてさらに精査する. (3)引き続き,簡約型実球等質空間に対するカルタン分解の明示的表示,制限ルートの計算および不変測度の研究を遂行する.研究手法が明確にあるため着実に進めていく. (4)既約なハイゼンベルグ型ゲルファント対に対する可視的作用の研究成果を論文にまとめ始める.また成果発表を行う.
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Causes of Carryover |
2020年度に引き続きコロナが収束しない状況下,2021年度も研究集会が縮小,あるいは開催されても対面ではなくオンラインとなり,また学外出張が一時期制限されていたため対面による研究打ち合わせができない状況であった.そのため,計上していた旅費は使用されることがなく,これが次年度使用額が大きく発生した最大の理由である.2020年度に発生した繰越金も予定通りに執行できずに2021年度も残ってしまったことも理由である. 本研究課題の最終年度である2022年度は,日本数学会が主催する学会や京都大学数理解析研究所主催の研究集会などが対面で実施される計画であり,状況を適切に鑑みた上で積極的に参加して研究発表や研究討論を行う.そのためには旅費が必須であるため本予算で適切に執行していく.
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