2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on cohomologies of automorphism groups of free groups focued on the unstable range
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19K03477
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
佐藤 隆夫 東京理科大学, 理学部第二部数学科, 教授 (70533256)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自由群の自己同型群 / Outer space / ねじれ係数コホモロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昨年度からの研究を継続し,Outer spaceを用いた,階数3の自由群の自己同型群のコホモロジー群の計算に注力した.具体的には以下の通りである.
自由群のIA自己同型群のホモロジー群を係数とするような,自由群の自己同型群のねじれ係数コホモロジー群には非自明なコホモロジー類が存在することがこれまでの研究から分かっているが,IA自己同型群の2次元以上のホモロジー群は完全に決定されておらず,したがって,自由群の自己同型群のねじれ係数コホモロジー群も完全には決定できない.一方,IA自己同型群の2次元コホモロジー群における,1次元コホモロジー群のカップ積の像の双対加群をGL既約分解すれば,自由群のアーベル化の2次の交代テンソル(以下,Eと表す.)が現れることが知られている.特に,自由群の階数が4以上であれば,この既約成分の重複度は2であるが,階数が3の場合は,ある種の退化が起こり,重複度は1となっている.
今年度は,Outer spaceの幾何を用いて,自由群の自己同型群のE係数有理2次元ホモロジー群を計算し,有理数体上2次元のベクトル空間になることが分かった.特にこれによって,非安定域では,当該コホモロジー群の有理数体上の次元が,単にGL既約成分の重複度に一致するわけではなく,組合せ群論的な要因によって両者がずれるという現象が生じることも分かった.さらに,E以外のいくつかの加群についても,階数が3の場合にねじれ係数コホモロジー群の計算を行ったが,今のところ非自明なコホモロジー類は得られていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに行っていた計算には,総合的な観点から誤りがあることが分かっていたが,それがなかなか解決できずに計算が進展しなかった.しかしながら,今年度はそれを解決することができ計算を完遂することができた. さらに,まだ限定的であるが,階数が2または3の自由群の自己同型群が作用するような,いろいろな加群に対しても有理非安定(コ)ホモロジーが手計算で計算できるようになり,結果として,自由群の自己同型群の(コ)ホモロジーに関する知見が大きく向上し,研究が進展したから.
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Strategy for Future Research Activity |
階数3の自由群のIA自己同型群の,2次元コホモロジー群における,1次元コホモロジーのカップ積の像の有理双対加群のGL既約分解には,自由群のアーベル化の2次の交代テンソルの他に,もう一つの既約な非多項式表現が現れることが分かっている.また,階数3のIA自己同型群の2次元ホモロジー群には,上述のGL加群たちとは異なる既約成分が存在することも知られている.そこで,今後はまず,これらの加群を係数とするような自由群の自己同型群のねじれ係数コホモロジーの計算を進め,その構造を明らかにしたい.
一方で,Outer spaceを用いた自明係数(コ)ホモロジーの計算には,Kontscevichのフィルトレーションを用いて計算を簡略化できることが知られているので,この方法をねじれ係数の場合に適用できるかどうか考察し,可能であれば,上記の計算,もしくは階数が4の場合に自由群の自己同型群のねじれ係数コホモロジー群の計算に適用させ,研究の進展を図りたいと考えている.
自由群の自己同型群の非安定コホモロジーはまだまだ計算例があまり知られておらず,今後も根気強く地道な計算を行うことで,少しずつではあるが着実に研究を進めていきたいと考えている.
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Causes of Carryover |
当該年度はコロナ禍により,あらゆる出張や研究者招聘が行えず,対面での研究に関する議論や情報収集ができなかった.次年度は,社会情勢や安全性に十分注意しながら,可能な範囲で研究集会への出張や研究打ち合わせ等を再開させていきたいと考えている.
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Research Products
(1 results)