2019 Fiscal Year Research-status Report
New developments in spin geometry
Project/Area Number |
19K03480
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
本間 泰史 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50329108)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スピン幾何学 / クリフォード解析 / 実グラスマン多様体 / ラリタ-シュインガー作用素 / ヒッグス代数 / Howe双対性 / 対称空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の主な研究成果は以下の2つである. (1)向き付き実グラスマン多様体Gr_o(2,n)における調和解析をHowe-dualityの視点から研究した(D. Eelbode氏との国際共同研究).n次元ユークリッド空間R^n上の直交群SO(n)不変作用素であるラプラス作用素,|x|^2及びオイラー作用素はリー環sl(2,C)を成す.よって,R^n上の多項式はSO(n)×sl(2,C)により既約分解でき,多項式を球面に制限することで球面上の調和解析へ応用できる.我々は,このHowe双対性と呼ばれるアイデアをR^{2n}上の右SO(2)不変多項式へと一般化した.多項式をStiefel多様体へと制限することでGr_o(2,n)の調和解析へ応用できる.実際に,Pizzetti公式をGr_o(2,n)へと一般化することもできた.特筆すべきは,SO(n)のdualとしてリー環の変形であるHiggs代数が現れたことである.また,それぞれのカシミール元の対応も明らかにした. (2)Spin3/2ディラック作用素であるラリタ-シュインガー作用素はアインシュタイン多様体上で良い振る舞いをする.この研究代表者によるアイデアを用いることで,対称空間上のRS作用素の固有値を計算する方法を明らかにし,球面・複素射影空間・四元数射影空間上の固有値を具体的にもとめた(富久拓磨氏との共同研究).既存の手法は球面のみに適用できたが,我々の手法は対称空間へ適用でき,計算も簡単になるという利点がある. どちらの研究成果も論文としまとめ国際雑誌へ投稿した.この他に,定曲率空間上の一般のテンソル場・スピノール場に対する調和解析の研究を行った.ラプラス作用素がディラック作用素の「根」であることの一般化として,高スピンのディラック作用素がラプラス作用素の冪乗の「根」であることを証明した(富久氏との共同研究).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように,本研究課題の目的である「グラスマン多様体上の調和解析」,「対称空間上のラリタシュインガー作用素の固有値計算」の研究成果を与え,2本の論文(共著)を執筆した.グラスマン多様体に関する研究は,この方面への第一歩となる成果であり,量子群の有限近似であるHiggs代数やその一般化が今後どう関わってくるかはとても興味深い.対称空間上のラリタ-シュインガー作用素の固有値計算も,計算を簡略化できたことは関連する話題への応用が可能となったことを意味し,その発展が期待できる.実際に,定曲率空間・対称空間上の一般のテンソル場・スピノール場の解析にその手法の適用を試みている. このように,2019年度の成果は,調和解析もしくは表現論の視点から新しいスピン幾何学の開発を進展させるものであり十分な研究成果と言えよう.一方で,これらの研究・執筆に多くの時間を費やしたため,微分幾何学の視点による研究はあまり進展しなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,まず2019年度の研究を継続し,定曲率空間上の一般のテンソル場・スピノール場に対する調和解析を実施する.高スピン-ディラック作用素がラプラス作用素の冪乗の「根」であることを証明したが,対称テンソル場についても同様の結果を得ているので,一般相対論・微分幾何学で重要な研究対象であるキリング-テンソル場について適用を試みる.そして,定曲率空間上でのこれらの研究成果を論文にまとめ国際雑誌に投稿する.次に,その研究を対称空間へ一般化することを試みる.特に,対称空間上のキリングテンソル場を考察する. また,Nearly Kahler多様体(6-dim)やSp(1)Sp(2)構造をもつ多様体(8-dim)などの特殊なアインシュタイン多様体上でのラリタ-シュインガー作用素の振る舞い(特に,消滅定理があるか?)についての研究を行う.これらの研究は,スピノール場の分解,ワイゼンベック公式の精密化を考察することで進められるであろう.そして,アインシュタイン変形との関わりについて考える. これらの研究と平行して,四元数ケーラー多様体上へのワイゼンベック公式,グラスマン多様体上の調和解析の研究も進めていく.どれも(国内または国外での)共同研究を行うため研究費は主に旅費として使用することを予定しているが,コロナの影響のため臨機応変に対応したい.
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Causes of Carryover |
研究打ち合わせのため3月中に国内出張をする予定であったが,コロナの影響でキャンセルしたため次年度使用額が生じた.2020年度の国内・国外旅費として使用することを予定している.
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Remarks |
Analysis & Geometry Seminar at University of Antwerpにおいて「Toward spin 3/2 gometry」という題目で研究成果発表を行った(2019年08月).
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Research Products
(2 results)