2020 Fiscal Year Research-status Report
時間的・空間的に相互作用をもつ格子確率モデルに関する精密な極限定理
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19K03514
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
竹居 正登 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60460789)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ランダムウォーク / パーコレーション / 極限定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従って空間的・時間的に相互作用をもつ確率モデルの研究を進め,本年度次のような成果が得られた. (1) 1次元辺強化型ランダムウォーク(ERRW)における再帰性保存の問題について再考した.初期重みのまま推移すると非再帰的になる状況下では,どのような強化規則を与えても再帰的にはならない(Takeshima (2001)).一方,初期重みのまま推移すると再帰的になる状況下でも,強化規則の与え方によっては非再帰的になりうる(Davis (1989)),このため,繊細な解析を要する問題として完全な解決が望まれている.Takeshima (2000)は,重要なクラスである線型ERRWの場合に再帰性が保存されることを証明した.本年度の研究により,Takeshimaの2つの結果に対してマルチンゲールに基づく簡潔で直感的にも納得しやすい証明を与えることができた. (2) 半直線上の線型ERRWについては,点xの右の辺の初期重みがx^aであるとき,ウォーカーが再帰的となるための必要十分条件がa≦1とわかっている.池浪 (2001)は,0≦a<1の場合に,時刻nでのウォーカーの位置を(log n)^{1/(1-a)}で割ると有界となる確率が1であることを証明した.本研究の計画段階で,a<1の場合にこのオーダーが正しいことの証明が得られていたが,本年度の研究では臨界的なa=1の場合を詳しく調べ,ある辺を1回横断するごとに増やす重みΔ>2の場合には,時刻nでのウォーカーの位置のオーダーに関するかなり精密な情報を得ることができた(Δ ≦ 2 とするとウォーカーの挙動が質的に変化することもわかっている). これらの成果を論文としてとりまとめて学術雑誌に投稿した.また,昨年度学術雑誌に投稿したElephant Random Walkと関連するパーコレーション問題についての論文1篇が受理・掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パーコレーションにおける極限定理の精密化や辺強化型ランダムウォークの極限挙動の研究は,研究の進捗が計画よりもやや遅れている感があるものの,これまでに得られている成果をとりまとめつつ,基本に立ち返った研究を地道に続けている.次年度の研究につながる考察と,関連して取り組むべき課題を見出しつつある.また,パーコレーションの問題と関連した記憶をもつランダムウォークの一種であるElephant Random Walkや,この研究から派生した微分不可能な連続関数の研究については,論文として取りまとめる段階には至っていないものの,新たな考察や結果を蓄積することができており,当初計画に含まれない部分の研究も進展している. 以上のことから,総合的に判断して「おおむね順調に進展している」と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
パーコレーション・強化型ランダムウォークに関する種々の極限定理について,本年度までの積み上げをさらに推し進めて新たな成果を得ることを目指す.とくに,ファーストパッセージパーコレーションにおける最適経路の性質の解明について引き続き考察したい.強化型ランダムウォークに関しても,木グラフ上のモデルについてさらに精密な極限定理が得られないか考察を続ける.これらを両輪とした研究推進により,パーコレーションにおける極限定理の精密化への道すじをつけてゆく. これらの研究を推進するために,必要な数学書を購入し情報を収集することが重要である.また,パーコレーションや記憶のあるランダムウォークについて活発に研究している国内外の研究者との議論・意見交換を行なう.得られた成果については研究集会等において発表し,参加者と意見交換することでさらなる深化を目指す.
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Causes of Carryover |
(理由) 令和2年度はコロナ禍のさなかにあり,研究打ち合わせや成果の中間報告等のために計画していた出張を一切断念せざるを得なかったため. (使用計画) コロナ禍の状況を見極めつつ,可能な範囲で研究集会等に参加し成果発表や研究討論を行なう.直接訪問しての研究打ち合わせが難しい状況が継続する場合には,研究のための資料をさらに充実させ,遠隔討論の推進をより効果的にする機材も購入するなど,研究計画遂行に有効な形で助成金を活用する.
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