2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on the nuclear dimension of operator algebras
Project/Area Number |
19K03516
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 康彦 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (70581502)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 作用素環 / Jiang-Su環 / 核型次元 / 分類理論 / KMS状態 / 力学系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究テーマである「核型次元」は与えられた空間上の連続関数全体として計算すると, 通常は良く知られた被覆次元と一致する. その場合、核型次元は低い次元から高い次元まで段階的に実現する事が可能である. しかし、数学的な基本条件である「単純」という条件を作用素環に仮定すると, 0, 1, と無限の極端な場合しか現れない事がこれまでの研究から判明した. その一方で「単純」という仮定を取り除いた条件下では, 今までの分類理論の感覚に反する現象が前年度の研究から明らかになってきた. 当該年度はこの「単純ではない」という条件を積極的に扱い, 分類理論や数理物理的な問題へ応用する事を行なった.
最近のC*環の分類理論では, 数学的に「単純」であるという基本条件が仮定されている. これは40年前に創設されたElliott分類プログラムから仮定されていた大前提で, この条件下でのみ分類が可能であるという事が定説であった. 当該年度の研究はこの定説から離れ, RAF (Rationally Approximately Finite dimensional) と名付けたクラスの作用素環を構成し, この上の分類理論を構築した. このクラスの環は前年度からの課題であるKMS状態の存在問題に優れた応用を持つ. 具体的には前年度に構成したKMS状態を実現する時間発展の構成を, 取りうる範囲全てのパラメータで実現する事が可能となった. 技術的にはKMS状態の「パラメータが有界である」という条件と作用素環の「単純性」が対応し、「非有界なパラメータ」には「非単純」な作用素環が必要である基本原理を示した. この成果は Elliott氏との共同研究として今季中に発表予定である. また, 昨年のJiang-Su環のKMS状態に関する結果は Elliott, Thomsen 氏らとの共著論文として発表した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの影響や社会情勢で予定していた研究集会への参加を断念せざるを得ない状況が続いたが、オンラインセミナーや共著者との頻繁なメールのやり取りにより、期待以上の成果を得る事ができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は作用素環の分類理論の発展と, さらにそこから得られた数理物理への応用を強く結びつける成果と言える. 元来, 作用素環論は数理物理の厳密な定式化という動機から von Neumann によって創設された分野であった. 今後の研究方針は, この当初の目標に立ち戻り, 本研究を数理物理的な視点から解釈する事を試みる. 具体的な方針として, 2022年度末に京都のRIMS研究所において研究集会を主催予定である. この研究集会では近年めざましい発展を遂げている作用素環の特に力学系の研究と, 場の量子論に代表される数理物理の研究を結びつけ, 力学系の分類理論から数理物理への応用を鮮明にさせる事を目的としている. 実際, 既に作用素環論の群作用の分類に大きな成果を持つ研究者や, 数理物理で重要な成果を持つ研究者に多数の講演を依頼し2つの分野の研究交流を予定している. 本研究の主題である, 核型次元やJiang-Su環, 分類可能な作用素環の上のKMS状態の存在定理などの物理的な意味合いを明らかにし, 数理物理から得られるアイディアを本研究に取り込む事が目的である.
また新型コロナウイルスなどの状況から予定が変更になる恐れもあるが, 8月にH.Lin氏が主催する上海の作用素環研究集会で本研究の研究講演を予定している. また, 共著者の1人であるElliott氏の在籍するトロント大学へ訪問し, カナダの国際研究集会やセミナーなどで本研究の発表講演を希望している. 本研究にはKMS状態という数理物理への応用のみならず, 作用素環の分類理論を大きく拡張するポテンシャルがある. 特に 非単純な方向へ分類理論を拡張する原動力となる事が期待でき, その事を本研究の発表と合わせ分野間に広めたいと計画している.
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスにより予定されていた研究集会がキャンセル, もしくはオンライン開催となったため.
|
Research Products
(3 results)