2019 Fiscal Year Research-status Report
Connection problems of hypergeometric functions from the view point of higher dimensional Erdelyi cycles and their intersection numbers
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19K03517
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三町 勝久 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (40211594)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 複素解析的線形微分方程式 / 超幾何函数 / 接続問題 / Erdelyi サイクル / 交叉数 / ファインマン積分 / モノドロミー / Heckman-Opdam超幾何函数 |
Outline of Annual Research Achievements |
複素解析的線形微分方程式論において接続問題が解けている多変数函数の例は非常に少ない.そこで,Appell, Lauricellaによる古典的多変数超幾何函数からHeckman-Opdamの超幾何函数や共形場理論のKnizhnik-Zamolodchikov方程式の解など現代的多変数超幾何函数に至るまでの接続問題を総合的に考察することで,一般のn変数で解ける例の多くを発見・蓄積・整理し,可積分な偏微分方程式系の解の大域的理論のさらなる発展の礎を作ることを目的とする.その方法論は,Erdelyiサイクルの高次元化とねじれホモロジー理論における交叉数による.
本年度の主な研究内容は次の通り.(1) LauricellaのE_D方程式に関する接続問題:方程式の特異点(1,...,1)における正則解を原点の近傍における解の基本系で表示するという形の接続問題をErdelyiサイクル上の積分による積分表示を用いることにより解き,それを応用してA型Heckman-Opdamの超幾何函数(の特別な場合)のHarish-Chandra展開公式におけるc函数が先の接続問題の接続係数に他ならないことを示した.(2) LauricellaのE_A方程式に関する接続問題:2変数の場合(ApplellのF_2の場合),HornのH_2函数とOlssonのF_P,F_Q, F_R函数が解空間の様子を調べるためには重要であるが,これらの多変数版をErdelyiサイクルを用いて明示的に導いた.そして,それを利用することによって,複数の接続公式を導いた.
これらを含む接続公式については,12月のイタリア・パドヴァにおいて開催された ``MathemAmplitudes 2019:Intersection Theory and Feynman Integrals''で講演した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で述べた通り,ほぼ予定通りの研究成果を得ており,次年度以降の研究も順調に推進できるものと考えている.研究費運用に関しても,合理的な支出を行っていると判断でき,次年度以降も継続した研究費運用により、有効な成果が期待できるものと思っている.たとえば,パドヴァでの研究会は刺激的だった.交叉数を用いることで,それまで闇雲に計算されていたファインマン積分が系統的に計算できるようになってきたとのことだし,そのいっぽう,いまのままでは,まだ,不十分とのことなので,これからの参入の余地が十分あるとみた.実際,交叉数と二次形式に関することなど,彼らは沢山の予想式を明かにしており,それらが証明されれば,加速器で得られた実験データと突き合わすことのできる理論値が沢山増えるとのことであった.自分のやってきた数学理論が,このような物理における実際的応用に役立つことになれば,大変うれしく,さらなる推進を強く思うようになった.
また,概要の(1)のE_D方程式のある接続公式とHeckman-Opdam超幾何函数に関する内容は論文にまとめ,学術雑誌に投稿したが,これ以外にも,いくつかの接続公式が導かれており,導出作業は,いまも続いている.概要の(2)のE_A方程式に関しては,無限遠点におけるF_B函数による解が,原点におけるF_A函数による解の基本系で表示されるという形の接続公式が,Appell and Kampe de Ferietの古典的教科書に掲載されている(導出法の記述は一切なし)が,この公式をErdelyiサイクル上の積分による積分表示と交叉理論を用いることで導出した.
以上を総合的に捉えて,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) LauricellaのE_D方程式に関する接続問題:Heckman-Opdamの超幾何函数に応用する箇所だけを論文にまとめだけなので,それ以外の接続関係についても,ある程度のまとまりができたら,論文としてまとめたい.(2)LauricellaのE_A方程式に関する接続問題:かなりの結果が蓄積されつつあるので,適当なところで,一旦,まとめて,論文とまとめたい.(3)AppellのF_4から LauricellaのF_Cへ :Aomotoの表示やKanekoの表示が正しいのかどうかという議論がいまだにある(そして岩波数学辞典第4版の内容に差し替えがあった)が,私自身の考察によれば,サイクルの理解が不十分なことからくる記述の仕方(といっても,これを正しく定式化するということ自身が重要な数学)のまずさが混乱の原因であって,じっさいには,Kanekoの表示もAomotoの表示も正しく定式化すれば正しいということが分かってきた.今後は,これをさらに精密化することにより,E_4の接続問題に挑戦したい.ただし,一般のF_Cの場合は当面考えないこととする.(4)パドヴァでの研究会の刺激を受け,(ホモロジーのみならず)コホモロジーに関する交叉数の研究の進化・発展にも強く興味を抱いたが,いろいろ調べてみると,基礎理論そのものもいろいろ不十分であるようである.そこで,一般超幾何函数_nF_{n-1}やSelberg積分,Knizhnik-Zamolodchikov方程式の解を題材にして,さまざまな実験を行いたい.そして,いずれ,接続問題にも役立てたい.
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