2019 Fiscal Year Research-status Report
開リーマン面のモジュライを用いた多変数関数論の新展開
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19K03522
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
濱野 佐知子 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (10469588)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 解析学 / 複素解析 / 多変数関数論 / 擬凸領域 / リーマン面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2次元擬凸領域をそこで定義された正則関数の定数面/ファイバーの族として捉えたとき、ファイバー上に全空間の擬凸性を反映する良いモジュライを新たに構成することで、2次元擬凸領域のモジュライ理論を展開することである。とくに領域の擬凸性の影響による剛性定理を定式化し、その応用として種数正の開リーマン面の擬凸変動に対する同時一意化定理を改良・拡張することに挑む。具体的には、複素助変数tをもつ開リーマン面R(t)の族に対して、各リーマン面の等角写像に関連したモジュライが複素多変数的に変動するものを定式化し、1変数的量変動と多変数関数論、特に領域の擬凸性との関連を引き起こす原理を追求する。本年度得られた研究成果は次の通りである。 1.種数1の流体力学的微分の2階変分公式と解析族の同時一意化の具体例を構成した。種数1の開リーマン面R(t)の滑らかな変形族に対し、昨年度確立したある特別な流体力学的微分の変分公式を、R(t)の理想境界成分をトーラスT(t)の標準基底A(t)周期と一定角をなす測地的平行截線からなる面積0の集合として実現する流体力学的微分の2階変分へと改良することに成功した。その応用として、ファイバーR(t)が種数1のある具体的な開リーマン面の変形族に対する同時一意化問題を解決した。 2.種数2以上有限種数開リーマン面に対する擬凸性を反映する良いモジュライを構成した。有限種数開リーマン面Rの同種数閉リーマン面Sへの等角埋め込みが誘導する、Sの周期行列の各対角要素全体は上半平面内の閉円板であることが示されているが、種数2以上の場合、Rの内部に限らず理想境界上にも分岐点が存在し得るため、助変数tを動かすと新たな貼り合わせの自由度に付随する、種数1では現れなかった困難が生じた。これを打破するため擬凸性を反映する良いモジュライを新たに構成し、その変動を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
得られた研究成果について8件の招待講演を行い、国内外での研究集会や研究交流にて情報発信することに努めた。また、これまで得られた結果を論文としてまとめ、投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
リーマン面がコンパクトであるならば、その位相的性質は種数で、解析的性質はそのモジュライで完全に決定される。一方で、無限型リーマン面の分類理論が示すように、開リーマン面のもつ複素解析的にもポテンシャル論的にも極めて豊富な多様性は、リーマン面の変形族や変形空間にも及ぶはずである。そこで、本研究はそのような開リーマン面の分類に対しても、西野利雄氏の剛性定理に代表される擬凸領域の一様性定理がどこまで成立するかを問い、全空間の擬凸性を反映する良いモジュラスを探し出すことで、開リーマン面のモジュライを用いた多変数関数論を展開したいと考えている。関連する研究者と意見交換し、得られた成果を講演により公表することで新しい視点を議論する。
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Research Products
(10 results)