2020 Fiscal Year Research-status Report
The effect of delay on the asymptotic properties of solutions of difference equations
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19K03524
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
松永 秀章 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40332960)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 時間遅れ / 差分方程式 / 漸近挙動 / 微分方程式 / 安定性 / 特性方程式 / スペクトル理論 / マッセラ型の定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に以下の2つのテーマについて、研究を行った。 (1) バナッハ空間上における差分方程式の解の漸近挙動とその応用について:昨年度、バナッハ空間上における差分方程式 x(n+1)=Tx(n)+f(n) の有界解の漸近挙動を考察した研究(掲載決定)をさらに精密化し、マッセラ型の定理を確立することができた。また、得られた結果をある周期系線形発展方程式に応用し、周期1の漸近周期解の存在を明らかにした。本研究は、米国アーカンソー大学 Nguyen Van Minh 氏とベトナム国家大学の Nguyen Duc Huy 氏、Vu Trong Luong 氏との共同研究である(投稿中)。 (2) 2つの時間遅れをもつ線形微分方程式の零解の漸近安定性について:2つの時間遅れτ、2τをもつ1次元線形微分方程式に付随する特性方程式の精密な根の解析により、零解が漸近安定になるための必要十分条件を係数と時間遅れを用いて具体的に与えることができた。特に、ある条件の下で、時間遅れのパラメータを増加させる、安定と不安定と有限回繰り返しながら、最終的に不安定になる stability switches が生じることも明らかにした(投稿準備中)。本研究は、正の係数に対してのみ解析していた先行研究を補完する研究成果である。 なお、国際雑誌 International Journal of Dynamical Systems and Differential Equations の特別号 (Differential, Difference and Dynamic Equations) のゲストエディターを共同で務め、編集作業を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に投稿した2編の論文がアクセプトされ、本年度に1編の論文を投稿し、2編の投稿準備中の論文がある。コロナ禍によるオンライン授業のため、研究時間が十分確保できず、前年度に完全解決している2つの時間遅れをもつ1次元線形差分方程式の漸近安定性の論文投稿ができていないが、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画通りに研究を進めていくが、2020年度に2つの時間遅れをもつ線形微分方程式の安定性解析が思いがけず進展したので、その成果を論文にまとめて投稿することも目標に追加する。また、時間遅れをもつ微分方程式や積分方程式と差分方程式の比較研究により解構造の本質的相違性や類似性を解明し、時間遅れをもつ方程式の定性理論のさらなる発展に寄与する。そのために、差分方程式の研究者を訪問したり、研究集会に参加したりして、情報収集を行う。また、内外の研究集会や学会などで研究成果を発表する。
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Causes of Carryover |
2回の非常事態宣言を含むコロナ禍により、本年度は学会発表や研究打ち合わせの出張が全くできず、旅費が不要となったため。 次年度の前半もコロナの変異株が猛威をふるっている状況のため、多くの国際学会や研究集会がオンライン開催になる可能性が高いので、予算の多くは差分方程式関係の図書の購入やコンピュータサプライ品の購入などの物品費に使用する予定である。
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