2020 Fiscal Year Research-status Report
Spectral theory for generalized Sturm-Liouville operators and its randomization
Project/Area Number |
19K03526
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
南 就将 慶應義塾大学, 医学部(日吉), 教授 (10183964)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | Sturm-Liouville 作用素 / ランダム作用素 / シュレーディンガー作用素 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に引き続き、減衰因子のあるホワイトノイズをポテンシャル項とする半直線上の1次元シュレーディンガー作用素Hのスペクトルについて調べた。ポテンシャル項が減衰する連続関数による掛け算作用素である場合は、Hは自由ラプラス作用素の相対コンパクトな摂動とみなされるため、Hが下に有界でそのスペクトルの負の部分が離散的であることは関数解析の一般論から直ちにわかる。一方、ポテンシャル項が減衰因子のあるホワイトノイズのような超関数である場合はその一般論が適用されない。したがって確率論的な手法によりHのスペクトルの性質を調べることになるが、特に減衰因子が空間的に二乗可積分でない場合に、作用素Hの下からの有界性とスペクトルの負の部分の離散性を見極めることが難しい。それを明らかにするために、ポテンシャル項を長さLの有限区間に制限し、その外で恒等的にゼロとおいた作用素を考え、Lを大きくすることによりもとの作用素Hを近似することを考えた。具体的には次の2つを試みたが、まだ成功には至っていない: (1)近似作用素を定める二次形式の下界を確率変数として精密に評価し、Lを大きくした極限においてそれが有限にとどまるかどうかを調べること。 (2)近似作用素に対する固有値方程式の解を固有値パラメータについての解析関数とみなしたときに、そのゼロ点分布を点過程として確率論的に特徴づけ、Lを大きくした極限において最小のゼロ点が有限にとどまるかどうかを調べること。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度はコロナウィルス感染症流行のため、担当授業がすべてオンラインとなり、その準備の負担によって教育活動と研究活動のエフォートのバランスが大きく崩れてしまったことが主な理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)減衰因子のあるホワイトノイズをポテンシャル項とするシュレーディンガー作用素の研究を継続する一方で、減衰因子が空間的に二乗可積分である場合を論文にまとめ、区切りをつける。 (2)測度 m(dx)に関する微分を含む2階の項を持ち、Q'(x)の型の超関数を0階の項とするSturm-Liouville作用素に対するスペクトル展開定理を証明する。ただしQ(x)は右連続で左極限を持つ関数で、Q'(x)はその形式的な微分である。その上で測度 m(dx)が漠収束し、Q(x)がSkorohod位相の意味で収束するときに、対応するスペクトル測度がどのような意味で収束するかを確かめる。 (3)2階微分の項を自由ラプラス作用素とした場合に、0階の項として許される超関数のクラスを確定させる。また、それに応じてGelfand-Levitanの逆スペクトル問題の解と小谷理論がどこまで拡張されるかを調べる。
|
Causes of Carryover |
2020年6月にフランスにおいて本研究課題に関連の深い研究集会の開催が計画されていて、出席の予定であったが、COVID-19の世界的流行のため開催が2022年6月に延期された。そのため2020年の外国出張のために留保しておいた資金が未使用のまま残った。2021年度もCOVID-19の流行の収束は見通せず、外国出張はもとより国内での対面による研究交流も難しいと予想される。そこで、研究交流はオンラインによるものとし、旅費として使用予定だった資金を基本的な文献の取り寄せと関連分野における新刊の専門図書の購入に充て、中長期的な研究の基盤を整備していく。
|