2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K03528
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
中屋敷 厚 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (10237456)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ソリトン解 / 有理曲線 / 頂点作用素 / 佐藤グラスマン / KP階層 / 周期解 / 網目模様 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度研究した代数曲線のワンステップ退化を繰り返して最終的に到達する有理曲線のタウ関数を佐藤グラスマンを用いて研究し次のような成果を得た。1. タウ関数を時間変数の2次式の指数関数として具体的に決定した。2. タウ関数のシューア関数展開の展開係数を具体形に決定した。3. 得られたタウ関数に頂点作用素を作用させ、0でない定数に漸近するソリトン解を構成した。4. 楕円関数解に頂点作用素を作用させ、周期解に漸近する網目状のソリトン解が構成できることを確認した。
1の形のタウ関数(ガウス型と呼ばれる)は、KP方程式の解としては定数解という単純な解に対応するが、位相的場の理論に関係した興味のある解であることが論文完成後に判明した。今年度の結果が位相的場の理論の研究にどのように関係して行くかは面白いところである。2については、シューア関数展開の展開係数がすべて単純明解な形で知られているタウ関数の例は少ないため、今後幾何学的な母関数との比較などを研究する際重要な役割を果たすと期待される。3、4は、昨年度の研究成果を受け、タウ関数に頂点作用素を作用させると、そのタウ関数を背景とするソリトン解が得られるのではないか、という一般的なアイディアのもとに行った研究である。ただ、3の場合は背景が定数なので、見かけの解の形は背景が0のソリトン解と大きく違わない。そこで、4はさらに楕円関数解に頂点作用素を作用させて解を作り、その形をコンピュータでシミュレーションしてみたという研究である。頂点作用素の作用と代数曲線の退化の関係が分かれば、3,4の結果は、一般のソリトン解に退化する代数幾何解の解明に結び付くため、重要な成果であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
代数曲線の退化に伴うKP階層の解(タウ関数)の変化の研究については、頂点作用素の作用との関係など新たな観点を見出しつつ比較的順調に進んでいると考える。しかし研究計画のもう一つの柱である、KP階層の任意の解を近似する代数曲線列の構成に向けた研究については未だはっきりした成果が上がっていない。そのため全体としてはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
代数曲線の退化に伴うタウ関数の退化の研究については、頂点作用素の作用の幾何学的な意味を解明することを軸にして進める。これは今年度の研究により明らかになってきた研究方向であり、研究の進展が期待できる。
KP階層の一般解に対応する代数曲線族の構成については、引き続きKdV階層の場合のDubrovinらの結果を佐藤グラスマンを用いて定式化することを目指して研究を進める。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で国内外の研究会は中止またはオンライン開催となり、旅費の使用額が0であったことが主な原因である。また、オンラインセミナー、オンライン研究会出席のために必要な機材の購入も計画したが、教育用に購入した機材(パソコン、カメラ、マイクその他の電子機器)がそのまま研究用にも使用可能であったため、機材の購入の費用もかからなかったという理由もある。
今年度の使用計画として、オンライン研究環境整備のためのさらなる機材(パソコン、スキャナー、その他の電子機器)の購入、コンピュータシミュレーションのためのソフトウェア購入、状況が許せば研究連絡のための旅費、などへの使用を考えている。余った場合は、コロナ後の研究に備えて次年度に繰り越す。
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Research Products
(1 results)