2020 Fiscal Year Research-status Report
漸近的表現論と確率モデルのスケール極限の融合的な研究
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19K03532
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
洞 彰人 北海道大学, 理学研究院, 教授 (10212200)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 漸近的表現論 / 自由確率論 / ヤング図形 / 連続時刻ランダムウォーク / 対称群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の枠組は、群の表現の漸近挙動と確率論の極限定理を融合的にとらえることである。群の表現における漸近的な視点としては、何らかの意味で群のサイズが無限に大きくなる系列を扱うのが主眼である。その際、増大の速さ、つまりスケールのとり方によって全く異なる極限描像が現れる。多くの場合、サイズの増大に伴って群の作用の複雑さは飛躍的に増し、個々の群作用を取り扱うのに有効で精緻な組合せ論的技法は、往々にしてその威力を発揮しえない。確率論の洗練された極限定理の出番がそこにある。また、群の作用は、興味深く具体的な確率モデルをうみだす源泉の1つである。このような認識のもとで、本研究のベースになっているのは、対称群やユニタリ群の作用、ヤング図形の統計集団、対称関数などの素材が関わるマルコフ連鎖である。漸近挙動としては、群やヤング図形のサイズが大きくなるとともに、マルコフ連鎖の長時間挙動をあわせた時空に関するスケール極限を問題にする。今年度はとくに、連続時刻で微視的な待ち時間分布を一般にした(もはやマルコフ的でない)ランダムウォークのスケール極限の研究を主な柱とし、一定の成果を得た。増大する群の帰納列は、既約表現の制限と誘導(分岐則)によって確率的な構造を内包している。ここで扱ったのは、対称群の帰納列がこうしてうみだすヤング図形間を遷移するマルコフ連鎖である。さらに、対称群の指標やシューア関数をもっと広い枠組でとらえ、制限誘導連鎖に限らないヤング図形上のマルコフ連鎖をベースにするモデルも興味深い。それらは、今後の研究の一方向を示唆するものである。 対称群の指標とシューア関数の関係は、いわゆるシューア・ワイル双対性として明快に説明される。今年度は、シューア・ワイル双対性や超幾何関数に関係する情報理論におけるある種のモデルについての共同研究にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一定の研究成果は得られているので、研究の進捗状況は悪くはない。しかし、感染症対策に起因するさまざまな制限により、効果的な経費の執行は進んでいるとは言い難い。支出予定の経費の大きな部分を占めるのが研究打合せのための旅費であるが、実際に行き来する対面での研究打合せは実行できなかった。また、リモート授業の構築などの教育に関わる本務のエフォートがずいぶん増加したことも挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題や方向性ははっきりとしており、研究計画調書および交付申請書に記した線に沿って、予定どおりに推進していく。群の表現がうみだす確率モデルを対象にして、表現論と確率論の融合的な研究を進める。研究打合せのための旅費の執行がどの程度可能になるかは不透明であるが、研究打合せの形態を工夫することによって、課題の遂行に支障が生じないようにする。
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Causes of Carryover |
(理由)次年度使用額がこのように生じたのは、感染症対策のため、予定した旅費の執行ができなかったのが、もっとも大きな理由である。 (使用計画)旅費の執行が可能になるかどうかは、感染症の蔓延状況によるため、現時点で不透明である。そのため、旅費の支出額が予定を下回る可能性はあるが、課題の遂行に支障がないよう、研究打合せを円滑に行うための経費を増やしたい。
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Research Products
(1 results)