2021 Fiscal Year Research-status Report
量子スピン系における基底状態にスペクトルギャップを持つハミルトニアンの分類
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19K03534
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
緒方 芳子 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (80507955)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トポロジカル相 / 量子スピン系 / フェルミオン |
Outline of Annual Research Achievements |
量子スピン系において,基底状態にスペクトルギャップを持つモデルの分類問題は次のようなものである.二つのモデルは, スペクトルギャップを閉じることなく滑らかな路で移り合うとき,同値であると考える.ここでtrivial interactionを含む相を自明相,trivial interactionを含まないような相のことをトポロジカル相という.さらに対称性を課した分類問題も考えられている.二つの対称性を満たすモデルは, スペクトルギャップを閉じることなく,かつ対称性を破ることなく滑らかな路で移り合うとき,同値であると考える. 自明相のsymmetryを含んだ分類の同値類のことをSPT(symmetry protected topological order)相という.今年度はこれら問題について以下のことを明らかにした. 1. Algebraic quantum field theory で知られるsuperselection sector という概念についてギャップ相で研究するということをおこなった.superselection sector がトポロジカル相の不変量であることをPieter Naaijkens氏と共に明らかにした. 2. superselection sector からapproximate Hag dualityという仮定の下,braided C*-categoryが得られることを示した.これはanyonと呼ばれる紐状の励起に哲学的には対応している. このbraided C*-categoryの構造自体が, トポロジカル相の不変量として対応していることを示した. 3. 2次元フェルミオン系のSPT相の分類問題の不変量を求めた.これはinvertible QFTで予想されているものに比べてある二重化が起こったものであるが,CPT-symmetryを課すとこの二重化が解消する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで自明相であるSPTについて主に研究を行ってきたが、今年度初めて、よりエキゾチックなトポロジカル相について知見を得ることができたことは進展である。 approximate Haag duality という新しい概念をもとに今後研究が進展させていきたい.superselection sector を導出したPieter Naaijkensとの共著はcommunitations in mathematical physicsにaccept済,braided C*-tensor categoryを導出した論文はjournal of mathematical physicsのICMP特別号に掲載された.またフェルミオン系についてはこれまでに空間次元1次元の結果を得ていたが、2次元に拡張できたことは大きい。2次元の不変量は多少複雑であり、これがinvertible QFTという一見全く異なるものから予想されたものとCPT対称性のもと一致しているということは驚きであった。また、CPT対称性が必要であるということも、QFTという連続な世界ではCPTが自動的に成り立つが格子の上ではこの対称性が成り立つ理由はないことと、うまく合致しているように思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.Approximate Haag duality という性質から、Braided C*-tensor category を導出することを昨年行った。このBraided C*-tensor categor yは分類の不変量となっており我々にとって重要なものである。問題は、現時点でApproximate Haag dualityが特別なモデル(とその摂動)についてしか示せていないということである。本年度は、この性質を、まずPEPSと呼ばれるtensor networkのモデルにおいて示す。さらにそこで得られた知見をもとに、一般のギャップ相においてApproximate Haag dualityが成り立つことを示す。 2.topological 相の不変量には、1のBraided C*tensor categoryのような紐状の励起以外に, chiral central charge と呼ばれるものがあると考えられており、物理の論文で議論されている。本年度はこのchiral central chargeの導出及び不変量であることの証明を、Algebraic quantum field theoryの技術を参考にしながら完成する. 3.invertibleであるがshort range entanglementではない状態の構造を明らかにする.特に、それらを見分けるような不変量を見つけたい.そのためにまずKitaev E_8state と呼ばれるものについて理解を深めたい.特にSPTの解析で出てくるinvertible state の分割可能性についてその構造を明らかにしたい.また,1次元ギャップ相においては基底状態はshort range entanglementを持つと考えられているがこの問題を解決したい.
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Causes of Carryover |
コロナウイルス蔓延のため、全ての出張がキャンセルになったため。
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Research Products
(14 results)