2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K03544
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
上原 崇人 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (40613261)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | K3曲面 / 有理曲面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,有理曲面を用いたK3曲面の解析である.以前の研究において,複素射影平面上での楕円曲線内の9点ブローアップでえられる2つの有理曲面を貼り合わせることでK3曲面が構成されることを示した.また,本構成によるK3曲面は,19次元の族をなし,族における一般的な曲面は非射影的となることも示している.ここで問題となるのは,この構成によるK3曲面族の中に射影的な曲面は含まれているか否かである.今年度はこの問題について着手して,小池貴之氏との共同研究により次の結果をえた.すなわち,当該構成によるK3曲面族の中に,18次元の射影的なK3曲面の族が存在することを示した.この結果は,本構成が射影的曲面と非射影的曲面を共に含む幅広いクラスのK3曲面を実現するを示しており,与えられた周期に対応するK3曲面の具体的な実現や,K3曲面上の力学系の具体的構成及びその解析など,今後の発展に大きく寄与することを期待している.本結果は,2つの有理曲面の直線束が貼り合わせ可能となる構成方法に制限して,この直線束の上に貼り合わせ可能で正のチャーン曲率をもつエルミート計量を構成することで示される. なお,本研究成果に関して,研究集会「Aspects of Complex Dynamics」においてオンラインによる講演を行っている.さらに,本結果を論文としてまとめ,Epijournal de Geometrie Algebrique に掲載されることが決定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な研究目的は有理曲面を用いてK3曲面上の力学系を研究することである. 今年度の研究は, 力学系の研究までは行えなかったものの, 本研究におけるK3曲面の構成が幅広いクラスの曲面を実現していることを示しており, 今後の力学系の解析に役立つことを期待している. よって,おおむね順調に進展していると結論づけた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に続き, 有理曲面を用いてK3曲面上の力学系を研究していく. まず, これまでに得られた有理曲面上における写像の構成および力学系現象の解析を, K3曲面上に応用して力学系について調べていくつもりである. また, 本構成によるK3曲面の中に楕円曲面が存在するか否かは未だ解決されていないため, この問題についても解決していくつもりである.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により, 予定していた出張が延期となったため, 次年度使用額が生じた. 次年度は, 対面開催予定の研究集会が増えてきているため, 旅費等に使用するつもりである.
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