2020 Fiscal Year Research-status Report
Exploring algebraic structures of nonlocal classical integral systems
Project/Area Number |
19K03550
|
Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
土谷 洋平 神奈川工科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80460294)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 数理モデル / 非局所微分方程式 / 可積分系 / 特異積分変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、特異積分変換や時間空間シフトなどの非局所項を持っている微分方程式の構造あるいは、その解の構造を研究するものです。非局所方程式が研究されるようになったのは歴史的にみても最近のことであり、その多くは関数解析分野の動機と道具立てからのアプローチです。本研究課題は、特殊な方程式・特殊解であっても、非局所方程式が``代数的な''構造を示す例を提示することを目指しています。「今後多くの研究者に磨いてもらうべき原石を提示する」ことを掲げて研究を行ってきました。 研究計画は、研究代表者の過去の研究の蓄積から、非局所型のソリトン方程式と量子群の関係を基本戦略においています。しかし、2020年は、量子群とはおそらく関係ない、アノマラスランダムウォークの一種に位置づけられる離散時間の時間遅れ確率モデルを見出し、その挙動とfavorite-longshotバイアスの関係についての考察を論文誌に投稿しました。残念ながら採録には至りませんでしたが、現在投稿先を変えて原稿を修正中です。採録されるまでは詳しいことを述べることはできませんが、個人個人が賭けごとにおいて効率性仮説に基づいて賭けを行ったとしても、市場全体は効率的状態から乖離する、という結果を示唆するものです。この結果に関しては、モデルの非局所項が大きく効いています。 また、本研究計画が、英雑誌「Impact」誌に取り上げてもらいました。多くの研究者の研究対象となる原石を提示するのが本課題の目的ですから、このようなアピールは研究の推進に資するものだと言えます。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症が流行し、これまで週に1度は対面で研究打ち合わせを行ない、アドバイスをもらってきた研究者と、一切会うことができなくなりました。zoomで何回か打ち合わせをしましたが、対面のようには白熱しませんでした。また、大学の授業がオンラインになり、授業準備に多くの時間を取られました。本研究課題に割いたエフォート率が大きく下がってしまいました。 また、本課題と関係のないRSA暗号・楕円曲線暗号についてのアイデアが芽生え、そちらは順調に進み、論文投稿まで至りました。このことも、本課題へのエフォートを下げる理由になってしまいました。研究成果は、研究者という有機体から様々の要因を経て生み出されるものです。その研究が順調に進んだ理由は、無限次元Lie群の既約表現という本課題に関する事柄を考えるにあたって、有限群の既約表現という、初等的な事柄からじっくり復習しているときにふとアイデアを思いついたからでした。しかし科研費は研究者ではなく研究課題に帰属しているもですので、これを成果に数えることはしません。しかし、課題と関係ない問題が解けてしまうことは、昔から、特に数学分野では、多くの研究者が科研費に関して抱えている悩みだとは思いますので、記載しておきたいと考えました。
|
Strategy for Future Research Activity |
本計画は、理論の探索と結果の発表からなっているが、理論の探索に関しては最小限の収穫物を得た一方で、結果の発表に関しては 遅れをとっている状況である。今後、ワクチン摂取が進めば新型コロナウィルス感染症の流行も収束すると考えられ、勤務先の教育、事務業務が想定のエフォート率に戻り、研究のペースも予定通りには戻ると考えられる。しかし、遅れを取り戻すまでには至らない場合は理論の探索は断念し、結果の論文投稿と学会発表に力を入れる予定である。また、当初計画していた可積分系をベースとする研究よりは、現実問題から派生した非局所項を持った数理モデルの研究に成果が偏りつつある。「磨くべき原石の提示」が本課題の根本的な意義なので、より効率的に成果を得たいと考えている。今後も、計画当初以外のアイデアに基づくものであっても、非局所型方程式の分野の発展に資する結果が出そうな場合は、自然な流れに任せてそちらに研究を発展させたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の流行により、2020年度に予定されていた出張がすべてキャンセルになったこと。また、2019年度に予定されていた海外出張費が全て先方負担で賄われたことが次年度使用額が生じた理由です。 2021年度は、ワクチン摂取を終えてからは研究打ち合わせや成果報告の出張が予定通り行われます。また、2020年度の遅れの原因となった、オンライン授業対応について、遅れを取り戻すためにも、オンライン授業用の動画編集などの単純作業をバイアウト経費として支出できないか、勤務先大学にお願いしてみます。2020年度に進まなかった量子群の表現論の勉強を加速するために、専門家に個別指導の講師をお願いしたいと考えています。共同研究とみなされる内容であれば講師料は発生しませんが、内容が先方にとって全く基礎的で研究発展の内容が無い内容であれば講師謝金が発生します。以上のような手段で2020年の遅れを取り戻すために、やはり次年度使用が必要となります。
|