2022 Fiscal Year Research-status Report
Exploring algebraic structures of nonlocal classical integral systems
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19K03550
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
土谷 洋平 神奈川工科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80460294)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ソリトン方程式 / 非局所型可積分系 / テータ関数解 / 種数2以上の / 非局所モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、離散ラプラシアン付きperiodic-ILW方程式のテータ関数解を発見することができた。新しい可積分系を提案したものの明らかな解しか見つけることができないでいたが、2021年度に学会発表で報告した、多成分離散ラプラシアン付きperiodic-BO方程式の特殊解の発見に引き続くものとして、大変心強い。1970年代に元祖ILW方程式が提出されて以降、非局所系は、ソリトン解以外の解の存在/構成について、長く進展がなかった。特にテータ関数解は、通常の局所型方程式では2000年までに次々と構成されていったのに対して、非局所型は代数関数の特異積分変換を扱わねばならないところからして、明らかな困難があり、全く沈黙状態であった。2009年にParkerによるILWの種数1のテータ関数解が一報、申請者による2018年の種数2の解が一報あるのみであった。今回の結果は、それに引き続くものであり、2022年度日本数学会秋季大会で発表し、現在論文誌へと投稿準備中である。 また、2022年も広く非局所項が働く数理モデルに関する情報収集と研究者交流を行った。交流の結果「CCE'23: Complex Computational Ecosystems 2023」の農業環境分野のプログラムメンバーを務めることになった。この会議で、Best Non-Student Presentation Awardを受賞した論文”Vegee Brain Automata: Ultradiscretization of essential chaos transversal in neural and ecosystem dynamics”には、議論に対する謝辞として私の名前が謝辞の節に載っている。数理モデルの世界は奥が深く、特に非局所性は、生物の営みの核心の一つだと思っている。今後の研究推進の足がかりにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年と2022年に一つずつ学会報告をしたが、そのどちらも論文にまとめることができなかった。特に2021年の方は、神奈川工科大学、東京大学、東北大学と、共同執筆者が分かれてしまい、コロナ禍で交流が途絶えてしまった。2021年の冬に東北大学に2回訪問して、なんとか初稿を書き上げるところまでは到達したのだが、その後手を入れることができないでいる。また、研究代表者の所属する神奈川工科大学では2022年度の後期には変則業務多く発生し、各種業務へのエフォート率の配分が大きく変わってしまった。課題の推進において、長く集中しなければならない過程はほとんど進めることができなくなってしまった。しかし、細切れの時間でも進めることができる過程は、それなりに進めることができた。特に情報収集は捗った。非局所性が働く現象を求めて、広く情報収集を行なったが、生物生態系が作るべき分布現象について調べる中で、農業生態系の研究者と交流することになり、AVIDAやTierraなどの生態系をシミュレーションするセルオートマトンの使い方なども覚えた。また、2023年4月25日にアゼルバイジャンで開催されるComplex Computational Ecosystems 2023のプログラムコミティーメンバーも務めることになった。しかしながら、本研究課題は非局所型の可積分系の研究であり、こういった活動は、非局所性に対する知見を深めるが可積分系と必ずしも関係があるわけではない。したがって、こういった活動は、当初の計画から見ると進んでいると判断する材料にはならない。以上の理由から、総じて「遅れている」を選ばざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を平たく短い言葉で要約すると、「非局所可積分系の奥深さを、いくつもの成功事例を提示することで、世に知ってもらう」という課題である。2021年度、2022年度に得られた成果は、「非局所可積分系の奥深さ」を示すものであるので、これらの論文を出版することは2023年度中に行いたい。しかし、2021年度発表のものについては、共同執筆者の状況にもよるので、研究代表者だけの事情で実現するとは限らないが。 2023年度は、研究代表者の所属機関の内部での変化に伴うイレギュラーな業務の発生が続くため、本研究課題を推進にあたって長い集中を要する作業を進めることが難しい。すなわち、ノートとボールペンを持って可積分系に向き合う時間をとることができない。しかし、短い集中時間の総和で対応できるような過程は推進することができる。そこで2022年に蓄えた非局所性に関する知見を生かして、「(可積分系ではないとしても)非局所性の重要性、奥深さ」を見せるような研究は推進したい。これは、のちのち非局所可積分系の重要性へと人々の注意をむけさせる布石になるものであるから、元々の本研究課題の推進に資するものでもある。 具体的には、次の1,2,3を推進したい。1. 多成分Lotka-Volterra競争系を離散系または超離散系でシミュレートし、生物生態系がもつべき分布性が体現するための条件を提示する。2. 箱玉系を、微分方程式(おそらく非局所型)の弱解として捉える方法を探す。3. 2021年に出版したFLバイアスに関する論文を「投票者の反応には時間遅れ/長距離相互作用があるためにFLバイアスが起こる」ということがはっきりするように拡張する。資金の配分は当初計画から大きくは変わらないが、1の推進には2019に訪問して協力を締結したPolandの地震研の協力が必要なので、招聘か出張のどちらかが必要になる。
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Causes of Carryover |
遅れた理由は2つある。1つ目は本研究に関連する研究者達の環境の変化である。支出が必要な研究者交流、発表が激減してしまったため、次年度使用額が生じた。2022年度、特に前半は研究代表者の所属機関も含めてコロナの影響が残る研究機関も多く、活発な研究交流が困難であった。また、本課題の関連研究が最も多い国はロシアであるが、2022年度は政情不安が一段と深刻化した。本課題にアドバイスやサポートをくれていた研究者の中には亡命したり亡くなったりした方もいる。研究者の心理に大きな影響を与え、研究交流が減った要因となっている。2つ目の理由は、研究代表者の所属機関の体制が2024年度から変化することである。そのため、2022年度から2023年度には、本課題設定当初には想定できていなかった業務が多く発生した。課題の推進において、特に長い集中を要する過程を進めることが非常に困難になった。短期集中の積み重ねで進めることができる文献の精読や、シミュレーションなどの計算実験は意欲的に行ったが、これらは研究者間交流や研究発表と違って大きな支出はない。そのため次年度使用額が生じている。 次年度も引き続き、長い集中を要する過程の推進は困難である。したがって、そのような過程の推進は諦め、短い集中の積み重ねで成果を出し研究交流ができる問題に注力することとしたい。
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